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「安い」ってそもそも何?(1)
「全然、安くもなんともない!!」
ある設計者はバイヤーに怒鳴り声を上げた。
「安い」「安い」。そう言われて、採用を決定したあるサプライヤーのソフトのコストが、全然安くなかったのだ。
「安くない?」
バイヤーは驚いた。
支払い金額を確認しても、確かに以前のサプライヤーのコストに比して優位だったからだ。
それで、怒鳴り声を上げる設計者に確認した。
「安くないとおっしゃるが、これだけの効果が出ている。なぜ『安くない』と言うのか」と。
その設計者は、ただちにこう返答した。
「あそこのサプライヤーは、我々が質問することすらできない!!」
その設計者は付け加えていうのだった。
「1回の質問に答えるのに1万円といっている。一日何回か質問したら、それだけで何万円かがパアだ!!」
・・・・
このサプライヤーの名前については、具体名を書くのは伏せておく。
ただ、外資系で、有名な某ソフトを作っている会社だ。
ここの会社は、最初の何回目の質問まではいくら、それ以降の質問からはいくら、なんてことを急に設定してくるのだ。
上記の例がまさにそれに当てはまった。
「ここ安いし、ソフト品質もなかなか良いらしい」
という触れ込みで、数え切れないほどの打合せをしたのちに採用決定し、納入した後のトラブルがまさにそれだった。
ソフトにはトラブルがつきものだ。
しかも、それはソフト側のトラブルもあるし、使用者側の環境の問題もあって、一概にどちらの責任ともいえない場合が多い。
仕方なく、設計者は質問の電話とメールをする。
そしたら、奴らは冷酷にも、書面の一番端の極小文字で書かれた文面を見せ、「当然の主張」をしてくるのだった。
「はい、それではこの質問の返信のために、どこどこにいくら振り込んでください」と。
・・・・
いつから、バイヤーは表面のコストだけを見るようになったのだろうか。
いつから、設計のしやすさやアフターサービスまでを無視して、自己満足の世界に浸るようになったのだろうか?
それは、もちろんバイヤーの表面上の評価が、「いくら安く買えるか」にフォーカスしているからにほかならない。
表面上のコスト以外を無視し、いや、考えもしないからこそ、全社的なコストダウンにつながらないのだ。
しかも、そうやって表面的なコストだけ下げているバイヤーの評価が良かったりするから面白い。
これでは、購買部門の業務が「タコツボ化した」暗黒大陸、といわれても仕方がない。