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これまでの常識②・・・海外調達すれば安くなると思っている「海外調達によって、必ずしも安くなるわけではない」
私がここで強調したいことは次のことです。
(1) 輸入と現地調達は異なる
(2) 為替や法や税によってメリットは常に変化する
(1)について。考えれば当然でしょう。よく、どこかの最大手メーカーのことを取り上げる「現地調達率が○割を突破」という記事を読んで、「これからは輸入の時代だ。輸入を促進せよ」と言ってしまうのは、正しそうで正しくありません。その最大手メーカーは、海外に工場を保有しており、あくまでもその工場として現地サプライヤーからの調達を推進しているわけです。日本の工場で生産する分に、輸入品を使っているわけではありません。
そういう最大手メーカーは、むしろ日本で生産するものは日本から調達し、海外で生産するものはそれぞれの生産国内のサプライヤーから調達していることが多いのです。私も、その方が、むやみに輸入をするよりもずっとリーズナブルだと思います。
(2)についても、当然のことです。金融のポートフォリオ理論を持ち出すまでもなく、メリットを享受するということは、その裏側にはリスクが待ち構えているということです。そのリスクが高いほど、メリットも大きくなります。円高のときに、日本国内の商社から半導体を調達するよりも、ドル取引に替えて、香港あたりに調達先を変更するだけで、何割ものコスト低減を実現できた時代がありました。しかし、それは円高だったからです。円安が進んだ時代においては、そのような戦略は無意味どころか、逆効果でさえあります。
中国から買ってみれば2割安いとしても、将来現在の対円為替が2割以上高騰しないとも限りません。それは、ユーロ圏からの輸入であっても同じことです。製造業において、数%の原価を下げることは困難であり、それゆえに、少しでも安い海外からの輸入を試みることは否定されることではないでしょう。しかし、同時に、為替は簡単に数%以上変動幅があることも忘れてはいけないのです。
目的は輸入ではありません。海外から単に買ってくることでもないはずです。良いものを安く買ってくることが目的なのですから、自分の50km圏内のサプライヤーしか知らないくせに、いきなり海外とは飛躍しすぎではないでしょうか。もっと、日本国内でサプライヤーを調べたのか、と言いたい。
「中国で調達すれば安い」と何の疑問もなく信じられていたときのことです。私は、輸入している製品の中で「国内のサプライヤーに変更した方がこれだけ安くなる」という資料を示したことがあります。これは、ほとんど自部門への反逆行為に近いものでした。
そこには、輸入信者がたくさんいました。そこでの輸入オタクたちの回答は、「そんな良く分からないサプライヤーを使用できるのか?」という懐疑に満ちたもの。私から言わせれば、付き合いのある海外サプライヤーとだって、せいぜい年に一回二回くらいしか顔を合わせていません。「安心」と言うのであれば、そんな海外のサプライヤーと、2時間で会いに行ける国内サプライヤーのどちらが安心できると言えるのでしょうか。私は逆に「なぜあなたは既存の海外サプライヤーをそこまで信頼できるのか」と訊いてやりました。もちろん、即答はありません。
私は輸入を否定しているわけではありません。ただ、その効果が万能だと思い込まれることに異議を唱えているだけのことです。常に優れた手法などなく、場面や時期よって移り行く運命にあります。
メリットとデメリットを、冷静に定量的に捉え、常に正しい判断を行なうこと。それが、以前までの自分たちの手法を否定することになっても止むなしです。過去を否定したとしても、より良い姿を模索していきましょう。