イヤなバイヤーと高貴なバイヤーの臨界点(1)

イヤなバイヤーと高貴なバイヤーの臨界点(1)

「お互いさまじゃないですかっ!!」

ある会議でのこと。バイヤーは声を上げた。

会議には品質保証の担当者や設計者、営業部門までが集まっていた。

その会議は、少し前に起きたある製品の納期遅延の再発防止会議だった。納入希望日よりも1ヶ月も遅れてしまったのだ。

客先を待たせるわけにはいかず、バイヤー企業は代品をまず納入。その後、正規のモノが入った瞬間に人員を客先に派遣し、突貫工事で入れ替えをやってのけた。

その緊急対応費用は莫大なものになってしまった、と品質保証や営業部隊は言うのであった。

そして、その防止案が出てきた。防止案とは、サプライヤーが納期遅延をしないようにするための施策だ。

そのバイヤーは耳を疑った。

品質保証・管理部隊が持ってきた案は「今後、納期遅延や不具合が出た場合は、その発生費用を全てサプライヤーに請求し、購買が交渉する」というものだったからだ。

そりゃ相手は悪い。

だけど、こっちも悪いところはある。緊急で発注し、納入できないからといってサプライヤーの責任にされてはどうしようもない。

そのバイヤーはつい、反対の声を上げてしまった。

「そんなのお互いさまじゃないですかっ!!」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

一体、今もどれくらいの数のバイヤーが無理な納期を押し付けられて困っているのだろうか?

そして、どれくらいの数のバイヤーがその不毛な闘いに挑み、さらには挙句の果てに起こった不良補償の交渉を行っているのだろう。

上記の私の例は笑い話だろうか?

いや、違う。これに似たようなことを実施しているところはたくさんある。

あるメーカーはトラブルが起きた際、その製品のサプライヤーに、不具合解消に伴う全ての金額を請求している。

それはそうだろう?

確かに。でも、このメーカーがすごいのは、不良品や納期遅延を通知するFAX送信量金やそれに対応した人員の時間給までをも請求しているのだ。

その請求書が届き、月々の買掛金から相殺されるという。

そこを担当した営業マンは「電話代30円、対応費3時間×7000円」という文字を見るたびに気が滅入ってしまうという。

もちろん、この金額は自己申告で、営業マンには反論する余地が全く残されていない。

「納期フォローによる電話代860円」とまで来たときには、「ここの担当を辞めてやろう」と本気で思ったという。

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