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バイヤーが表舞台に立つ時代 ~ 私たちの明日に向けて(2)
あるとき、若手の購買マンでその会社の革新プロジェクトを、経営者にプレゼンテーションすることになった。運良く私も選抜され、一方で当然のごとく彼も選抜された。
私は23歳で、彼が25歳のときだった。
おそらく多くの上司は、新人に対して入社して2年も経たないうちから「コイツは使えるな、使えないな」という判断を下している。
したがって、その意味ではまず第一関門を突破した二人であったとは言えた。
その革新プロジェクトの会議の場。多部門から集まってきた優秀な若手たちとの討論の中で、私は彼の「他者を頷かせる」能力のすごさに正直、驚いてしまった。
口調は決して厳しいとはいえず、むしろ温和なほうなのだが、彼は一人一人を納得させいつの間にか彼の意見のほとんどが、「皆で決めた」ことかのように決定事項とされていたのだった。
彼が実践していたのは、非常に簡単なことだった。
どんなことでもいいから、まず誰もが納得せざるをえないことで頷かせろ!!
そして2回、3回と重ね、4回目に自分が本当に合意させたかったことを語れ!!
そしたら、相手は慣性の法則に従って頷き続ける。
まずはお題目に近いような常識的なことを述べ、相手に頷かせる。
次に、若干発展させた内容を頷かせる。
さらに次に、より発展させた内容を頷かせる。
そして最後に、そこから発展させて自分の本当に言いたかったことを述べ、頷かせるのだ。
たったこれだけなのだけれど、人間は一度頷いてしまったあと、似た内容に出くわしたとき(1)否定する (2)肯定する のうちどちらかを選択するかというと、もちろん(2)肯定してしまうのだ。
1回目・・・誰も否定できないお題目に近い内容
2回目・・・まぁ、納得できる内容
3回目・・・少しは納得できる内容
4回目・・・本来納得させたい要求
彼は日ごろから、営業マンや各部署に対しても、この手法を使ってまとめあげていた。そして、最後は若干強引にでも決定する。村田製作所の女性たちに対しても。
例えば、サプライヤーから相手の技術的な機密情報を聞き出すときは、まず1回目「ご提供いただけるサービスに、我々はお金をお支払いするわけですね」などという簡単な項目から頷かせて、「うん~うん~うん~」とやっていく。
後で学んだのですが、これは逆にマーケティングやセールスなどで使われている、心理学にも立証されたテクニックです。
このように他の分野で研究されている内容をバイヤーの分野で使わないのはもったいない。どんどん使うべきです。
完全に移行できないとしても、どうやったら他の分野の研究内容を自分に適応できるかを考えていく。たった少しの時間でいい。その時間がどれだけの差を将来生むことか。
バイヤー業はどちらかといえば、裏方の部署であることが多かった。
それは、他の部署をまとめるだけの活躍ができていなかったからだ。
そして現在、私たちは「コストダウンができない企業は消えてしまう」という時代に生きている。
まさに今こそ、他の部門をまとめ上げて、会社の花形部門になるときではないだろうか。あなたが最も輝く表舞台に立たねばならないときではないだろうか。
相手を頷かせることで、あなたが表舞台に立ってみよう。
・・・・
この話を書いている途中に彼のことを今更ながらに思い出した。
私は会社を移ってしまったが、彼は来週もいうのだろうか「どこどこの女性と飲みに行こう」と。