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バイヤーが表舞台に立つ時代 ~ 集中と選択と(1)
電話の主は、竹下登首相(当時)だった。
ある航空会社は、首相の外遊のとき、必ずその首相の出身県と同郷のスチュワーデスを用意していた。同郷のスチュワーデスにエスコートさせるのだ。その航空会社からしたら、同郷の女性を用意し親近感を沸かせる最高のおもてなしだった。
竹下登は、目的地の国のホテルに入るなり、常に「今日アテンドしてくれたお嬢さん(スチュワーデス)のご実家の電話番号を調べるように」と側近に指示したという。
そして、竹下登はホテルから国際電話をかけるのだ。
「竹下登でございます」
実家の両親は驚く。首相からの突然の電話だ。
「本日、飛行機に乗りまして、そしたらお宅のお嬢さんがいらっしゃって。それはそれは最高のおもてなしでした。お嬢さんは素晴らしい。よろしくお伝えください」
そうやって電話を切るのだ。
電話を受けた家庭の大半が、自分の娘の自慢を周囲にし、竹下登に次期選挙で投票するようにふれまわったという。
・・・・
なんという投資対効果だろうか。
わずか一本の電話で、何票もの票が買えるのだ。しかも違法ではない。
カネのバラ巻きで知られる竹下登首相も、票集めの観点から恐るべき投資対効果を狙っていたのだ。
票を集めるところには、気配りを忘れない。
これこそ、選択と集中ともいうべきものではないだろうか。
ここには批判することなどを超越した、したたかな戦略がある。