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バイヤーの敵を考える 第四回 設計
私がここで述べているバイヤーとは、メーカーの調達部門に所属する資材調達部員をイメージしている。私自身がそうであるが故でもある。従い、私が購入する物の機能、仕様は、私以外の人間が決めることになる。生産財を扱っていれば、かなりの確率で設計者が決めることになる。本来は協力しなければならない両者が敵になってしまうことが往々にして起こる。最も避けるべき事態であるが、なぜそうなってしまうのか?
まず、バイヤー目線での理由を書いてみたい。
私が置かれた調達環境では、どんなものを作るらなきゃいけないか?という情報は、まず設計へ届く。その情報は、ズバリ作るもの、購入するものでなく、メーカーにとっては非常に抽象的な内容であり、その抽象的なお客様のニーズを具体化するプロセスに、設計者が携わっているといえる。その具体化の過程で、設計者自身がいろいろなリソースにアクセスする。そのリソースは社内だけでなく、当然社外にも存在する。ネットで検索すれば、いろいろなサプライヤーが存在することがわかる。ホームページには思わず連絡を取ってみようかな?と思わせる魅惑的なキャッチコピーが並んでおり、資料請求も簡単に行える。サプライヤー開拓の初期のアクションが、全て自分のデスクで行えるのである。そんな頃、バイヤーはそんなアクションはつゆほども知らずに、旧知のサプライヤーと他愛もないやり取りをしていたりするのだ。
こんな状況を作らないために、初期段階でも資材・調達部門を参加させて・・・・・・ってのが、開発購買って考え方だ。図面が完成すればコストの80%は決まると言われている中で、その決まる前にバイヤーが参加してコストに目を光らすというのが狙い。しかしこの開発購買ができるバイヤーってのが、とっても難しいアクションを強いられる。
具体的に何が欲しいか判らない・・・・・・そんな状態から設計者と話をする。モノが具体化するプロセスに付き合うわけなので、非常に多大な時間を費やす必要があるし、この創造的なプロセスには設計者それぞれのクセがあって、標準的なプロセスに落とし込むことができない。それに、人によっては一人で考えさせてくれ、なんて言われる場合もあって、スケジュール管理を行うにも、なかなか頃合が難しい。この部分での設計者のアクションへ、どうバイヤーとして貢献するか?これができないと、設計者は敵になってしまう可能性が高い。
そして最悪のケースでは、
● 買うことはお金さえあれば誰でもできる
● バイヤーは、言われたとおりに買っておけばいいのだ
といった、「買う」というアクションに何の付加価値もないと設計者が思っている場合。こうなると、バイヤー、資材調達部門への配慮はなきに等しく、少しでも価格やそれ以外の条件でサプライヤーと揉めたりすれば、「足を引っ張るのはやめてくれ」という不条理な悲鳴が聞こえてくる。こうなったらもう敵対関係以外の何物でもない。
そういった最悪のケースに至らない為にはどうすればいいのか?
自虐的だけど、私は地道にバイヤーとして行っている付加価値を、エンジニアの皆さんへ知らしめていくしかないと思っている。本来的には、設計とバイヤーって、一番役割分担がしやすいし、協力関係を持って事にあたらなければならない。だって、二者の決定事項で、メーカーによってはコストの過半数以上が決まるのである。
会社とは、同じ船にのって同じ目的地を目指す旅のしている集団といえる。実り多き思い出深いたびにするために、もっとも協力関係を結ばなきゃいけない相手だし、敵にしておくには勿体無い相手だと思うのである。