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バイヤーの評価はなんなんやろ、ということ(1)
「カネはブラックホールに吸い込まれていたのか!」
購買部長は驚きの声を上げた。
当初赤字の予定だったその事業部が、決算の見直しをしたところ黒字になっていたからだ。
その購買部長は、皆を集めて「とりあえず緊急事態は脱した」ことを告げた。
そのように言ったのだが、同時に「おかしいな」とも感じていた。
突然の原価改善。
そして、他部門も売上の改善。
今まで、予想していたカネ以上のものが、一体どっから出てきたんだ?
結論的には、こうするしかなかったのだ。
「カネはブラックホールに吸い込まれていたんだな」と。
・・・・
私はよくこういうことを話している先輩バイヤーの姿を見たことがある。
「このコストさ、ちょっと値上げしておいて。今のコストだったら十分すぎるほど目標達成しているからさ。そして、その分来年に値下げしてよ」と。
この会話の内容が当初全く理解できなかった。
しかし、やっているうちに段々わかってきた。
各バイヤーにはノルマがある。コストダウンのノルマだ。
そしてその達成率は年々平均して刈り取れることが大切だ。
今期あまりにコストダウンしてしまったら、来期はそれ以上下げるのは非常に難しいだろう、だから今期はこの程度にしておいてその分を来年のコストダウン分として確保しておいた方がいい。
こういう発想がついつい出てきてしまうのである。
何を隠そう、私もやった。
ただ、大きな視点に立つバイヤーになるべき私たちはその考えが間違っていることも知っている。
とことんまで下げるバイヤーと、来期を見越して値決めするバイヤーのどちらがよいか?
もちろん前者に決まっている。
会社が支払う総額で言えば、後者のほうが明らかに大きいのだ。
だけど、とことんまで下げるバイヤーがもし次の期にコストダウンをできないのだとしたら上司から責められるだろう。
つまり、本当は安く買っているバイヤーが責められ、評価が低い、などということが起こってしまうのだ。
だから、バイヤーが本気で全てのものに関して、徹底的に交渉し全てを吸い上げたら、本当はもっと安くなるのだ。