- ホーム>
- 最強の調達・購買スキルアップ講座>
- バイヤーの限界、会社の限界(2)
バイヤーの限界、会社の限界(2)
あえて言う。
多くのバイヤーを、ある意味において救うために、あえて言う。
「ときに勤務企業によるハンディを凌駕することはバイヤーにとっては難しい」
「ときに業界の勢いは個人の能力の差など吹き飛ばす」
もちろん、自分が勤めている企業などに関係なく突き抜けた実力を発揮するのが優れたバイヤーである。
しかし、と私は思ってしまう。
確かに勤務している企業の実力差が、個々人の購買活動に影響する側面はある。
ある人が優秀であっても、勤務企業を変えてしまえばその実力を完全に発揮できなくなることは確かにある。 しかもこの解決は非常に難しい。
今まで誰だって、購買パーソンに対して同一のことしか言わなかった。
どんな購買関係の本だって、同じ内容を読者に伝えてきた。
そこには、「このことは大企業でしか使えない購買手法だ」などとは書いていなかった。「こんな手法はか弱い企業では使えない」などとは書いていなかった。
当たり前だ。トヨタと中小企業の購買力の差を前提にしてしまえば、どんな理想もむなしく聞こえる。
だから、そのようなブランド購買力をいったんは無視した形で購買のスキルや一般論が語られてきた。
これは悪いことなのだろうか。悪いことだとは思わない。
ただ、そんな理想をよそに、バイヤーにはリアルな事情が存在するだけだ。
・・・・
では、次は問わねばならない。
バイヤーは自分の勤務する企業の実力を超えて活躍できることはできないのか?スキルアップにつなげることはできないのか?
これにはもちろん、「できる」と答えておこう。
ただ、その答えの具体化は非常に難しい。各社に各様の規模や事情があるからだ。
しかし、各人が答えを導くためのヒントは提供できるだろう。
まず一つ目。私がヒントとなるエピソードは次のようなものだ。
バブル崩壊時に多くの証券会社が憂き目に遭っていった。そのとき多くの証券マンが異業種に転職していった。
そのときに最も移転先の企業で評価の高かった証券マンとは、一流証券会社で商品企画をやっていた人でも、最先端の金融商品を売っていた人でもなかった。
最も評価が高かったのは、中小証券会社で「地獄を見た」証券マンだった、という。富裕層ではなく、中流以下の大衆を相手に、その資産の増えた減ったを愚直に付き合い、ときには脅されてきた証券マン。こういう人は「肝の据わり方が違う」という。
次に二つ目。これはヒントの一片にすぎないが、購買の取引先評価を変える必要があるということだ。
たいてい、購買はQCDで評価したがる。
Qで品質を。Cでコストを。Dで納入を。というわけだ。これに加えて、もう一つのDを加えて開発力を見ようとする企業もある。
ただ、これではまだ足りないのではないか。
私のエピソードをあえて意訳すれば、Pの軸が必要ではないか。
つまり、P=ポジションである。
相手先の企業の中で、自社への取り組みがどれほどまでか。相手がこちらにかける熱意はどれほどまでか。相手の中での自社企業のポジショニングだ。実は、これが最も重要ではないか、とすら私は思い始めている。
ときにそれは「好き嫌い」と表現され、「やる気」と表現され、「相性」と表現されてきた。
取引先企業の、自社へかける情熱とモチベーションを考慮せずには、正しいサプライヤー評価などできるものか、とすら言ってしまおう。
これまでのサプライヤー評価は、最も重要な何かを欠如しているという点で使えない、とすら挑発的にあえて言っておこう。
そしてこれは、自社の都合だけを考えるのではなく、真にサプライヤー企業と自社のマッチングを考える上で、うわべの言葉だけでなく「サプライヤーと平等な取引関係」を開始する試みでもある。
このPを考慮し、全社の購買戦略が構築され、皆に認知されたとき、何かが変わる。
「バイヤーは、QCDDPでサプライヤーを評価してみろ!!」