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バイヤーは何をやってもいいわけではないけれど(2)
この前、バイヤーの倫理について問うたところ、多くの反響を頂いた。
それは、「もっとひどいバイヤーがいるよ」というものから、「ここまではいない。うちの会社はまだマシなんだと発見した」というものだった。
おそらく、バイヤーの各社比較をすればかなり面白い読み物ができるのではないか。
私も、もっと多くの話がある。
例えば、前回書かなかったが、数年前、学生時代の友人と居酒屋に行ったときのエピソードがある。
そこで、私の前のカウンターに座った男性は、関連会社の購買部長だった。
一人で座っていた姿を今でも思い出せる。
その購買部長は、座って飲んでいる間、ずっと携帯電話で話しているのだった。
その内容は「取引先の子供の就職を斡旋してあげている」内容だった。
「俺は、あいつもあいつも知っている。だって取引がある会社で、なんでも俺の言うことを聞くんだ」みたいな内容で、私はあれを聞いた瞬間に、ああいう風にはならないぞ、と誓ったものだ。
今思えば、大変貴重な経験であった。
・・・・
いや、私が書きたかったのは、悪しきバイヤーの非難ではない。
そんなことをするだけ時間のムダだ。
しかし、私がこれらのエピソードを通じて書きたかったことは、こういう立場を利用した振る舞いしかできないバイヤーにはなるまい、ということだった。
もっと購買は科学的であるべきだ。
もっと理論的であるべきだ。
営業マンのように、不条理にまみれることなく、自己の理論を一番貫きやすく、またそれであるがゆえに知的な葛藤を楽しめるほどの存在であるべきなのだ。
そして、バイヤーの業務自体を私的運用するでなく、ロジカルに真摯に立ち向かう気持ちを持ちつづける存在であるべきとも思う。
・・・・
バイヤーにはスキルが構築できない、と嘆く人がいる。
偉そうにしていれば、誰もがちやほやしてくれるという状況がその自虐を加速させ、偏屈にしてしまうときもある。
しかし、ここで思想の逆転をはかるべきなのだ。
優位な立場にいることを使って、自分のスキルを向上させていく決意をするということだ。
普通、営業マンが購買に技術的な知識を聞いても教えてくれる購買マンがいるだろうか?
営業マンが、相手先の購買部門のお偉いさんに技術的議論をふっかけても相手にされるだろうか?
否、である。
だけれど、バイヤーが営業マンに質問することはたやすい。だれだって、それほど技術面に興味のあるバイヤーには喜んで教えてくれる。
あなたがバイヤーならば、相手企業のお偉いさんに会える機会だって飛躍的に増えるはずだ。
目の前にあるこの製品をつくるにあたって、何が面倒か。何が困っているか。何が大変か。
そして、それを解決するためにはどうすればよいか。
それを聞けばいいだけなのだ。希望さえすれば、現場にだって連れて行ってくれるだろう。
そしてこういう質問には全く特殊技能は必要ない。ゼロである。
現場のオヤジが何を困っているか、ということを聞くことがいちばん簡単にできるのはバイヤーなのだ。
営業マンも知らないことをあなたは知るようになるだろう。なぜならば営業マンは製造現場にいないから。
そして、もっといえば、現場のオヤジから困ったことを聞き周るだけで、あなたしか知らないコストダウンの情報を得ることができるだろう。
・・・・
これが一体どうやってできているのか?
各メーカー間の見積もりの比較でなく、この物自体がいくらでできるのだろう?
という単純な疑問を持つだけでバイヤーの能力は向上するのだと思う。
そして、最も重要なことは、こういう情報収集をもっともしやすい部署にいるのがバイヤーという存在であるということに気づくことだと思う。
バイヤーの有利な立場とは、そのような意味で使われなければならない。
「営業マンの前のガムよりも、タバコを現場のオヤジと吸おう」