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バイヤーは萌える!!(1)
「本当に赤字なんです。大変なんですから。
もう、どうしようかって思ってて」
バイヤーは「またか」と思った。
ある通信配線装置の価格交渉の途中、営業マンから出てきた言葉を聞いてそう思ったのだった。
確かに、目標コストは厳しいものだった。それは認める。
しかし、それでも「赤字」とは言いすぎだ。
「いや、全然安くないでしょ」と言い返してやってもいいが、あまりにもワンパターンだ。よくありすぎる話だし、「赤字ならばあなたの会社の原価表を見せてみよ」といったところで、確かに赤字になっている「ご立派な」資料が出てくるだけだ。
こういう営業マンは泣き落とし型か、本当にバイヤーが「赤字でも見積を出してくれているんだ」と信じると思っている単純思考型の人だからひどく疲れる。
そういう人には、その営業マンの会社の損益計算書を見せて「利益でてるじゃないですか?」と言ってやっても「いや、オタクの商売だけは利益が出ていないんです」というだろう。
「じゃぁ、もう撤退なさってはいかがか」と皮肉を申し上げても、「私だけなんですよね。利益出てないの。嘘がつけない性分で・・・」などと個性分析までする始末だからタチが悪い。
そして、バイヤーはまたしてもこの言葉を聞くのだった。
「これ以上値引きなんかできません。本当に赤字なんです。大変なんですから」
・・・・
上記のバイヤーとは私だった。
これまで何度もこういう営業マンと出会ってきた。
そして、ふと思う。「価格交渉とは一体何なのか?」と。
交渉でコストを下げるなど、三流の会社がやることだ、と語る人がいる。少なからぬコンサルタントの方から聞いたことがある。
サプライヤーを選定する仕組みづくりで、見積コストの大半は決定してしまうのだ、と。
確かにそうだ。それは、私も分かっている。
競合の仕組みや、見積条件の提示、仕様の決定、そしてVAやVEの取り組み、段取りといったところで、サプライヤーが出してくる見積コストの大半は決まってしまう。
「そういう仕組みづくりをしないで、交渉でコストを下げようとするなんて、たいした効果など出るはずがない。交渉で下がるのは5%くらいだ」、と。そう語る人がいるのだ。
繰り返すが、確かにそうかもしれない。今までの購買のやり方を変えることには私は大賛成だし、異論もない。
ただし、現状の自分の業務を見てみると、「ここからしか買えない」というモノが多いのではないだろうか。「ここからしか買えない」というモノを持っているサプライヤーが多いのではないだろうか?
分かっている。
もちろん理想的には常に2~3社の競合可能サプライヤーを持つことではあるが、どんな努力をしても叶わない領域は多い。
だから、コンサルタントの語る「理想論」と現場のバイヤーは常に同床異夢であった。
現場のバイヤーは交渉で下げなければいけない機会がまだ多々あり、そういうときに前述の言葉をよく聞くことになる。
「本当に赤字なんです。ウチは大変なんですよ」