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バイヤーバカ一代(1)
「そんなことは聞いてねぇ!!」
上司は怒り狂ったように叫ぶのだった。
なぜこの半導体は、このメーカーから購入することを決めたのか?
なぜこの半導体のコストはこの金額にしたのか?
なぜこの半導体の発注ロットはこの単位なのか?
そういうことをバイヤーの部下に聞いた結果、全てがこういうのだった。
「いや、設計さんと話してますから」
最初の質問や、二回目の質問までは、いい。
しかし、全ての質問に対して、「設計さんが」という頭文字がついてくるとなると話しは別だ。
何でもかんでも、判断の基準軸を設計者に求めるバイヤーたち。
以前の購買部であれば、設計者たちが次々にやってきて部品に関する相談をされたものだった。しかし、今の購買部員は設計者の奴隷に成り下がっているのではないか。
確かに、進歩し続ける技術にバイヤーがついていけないのは分かる。
それにしても、全ての判断が設計基準でよいのか?
その想いを自己にも発するために、その上司は怒り狂ったのだ。
「設計、設計って、そんなこと聞いちゃいねぇよ!!」
・・・・
以前いた会社で、購買関係の変革がおきたことがある。
「全ての部品や外注のサプライヤー登録は、必ず購買部門を通すこと」
と、そのルールは高らかに謳っていた。
当たり前、といえば当たり前なのだが、絶対に設計者がサプライヤー名を登録できず、購買部員しか発注先サプライヤーを決めることができない、という内容をシステムに織り込んだことが画期的だった。
これまでならば、設計者が「決めてくれていた」サプライヤーを必ず購買部門が決定し、ロットやら諸条件も決定することになっていた。しかも、強制的に、だ。
すると何が起こったか。
バイヤーの自立心の芽生え、ではない。
バイヤーから設計者への電話が増えた。それだけだった。
「ねぇ、あのさぁ、これってどこから買えるんだっけ?」とか「ねぇ、これってここにしたらまずいかなぁ」とか、挙句の果てに「早くこの部品のメーカー名教えてよ」というバイヤーまで出てきた。
結局はバイヤーは自ら決定することを拒み続け、設計者にシステムの枠を超えた依存状態へと向かっていったのである。
合掌。
これで、トップは購買部門やら設計部門やらの分権を本気で信じているのだから恐ろしいのだ。
結局は、強制的なシステムではなく、モチベーションと個々の能力を上げることでしか解決できないということを、逆説的に鮮やかに見せてくれた季節であったのだ。
だから、このような設計者からのコメントも黙って聞くしかないのである。
「ところで、購買さんって何するんだっけ?」