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事務社員にもトヨタ方式は有効か
この前報じられた内容によると、第一生命保険は事務社員を中心として、トヨタ生産方式(TPS)を導入するという。事務作業のムダをできるだけ排することで、事務時間を15%程度削減することが狙いだ。トヨタ方式で事務効率を高めようとしている。
私は事務作業を徹底して削減することには全面的に賛成である。これまで、日本の労使間では、「社員を長時間使っても安い」ということ事実があった。欧米の社員に比べても、社員に支払う残業費が安かったことから、社員はだらだらと会社に残ることが定常化していたのだ。
この状況が生み出したのが、「長時間勤務に拘らず時間あたりGDPが低い」日本という国家であった。長時間労働が、高い効率性や生産性を生んでいるのであればまだ良い。でも、実際は長く働くし報われないというものだった。日本人の(経営者を含む)労働者のうち、年間数カ月の休みをとっている人などほとんどいない。
しかし、あえて問題点を指摘すると、このように事務作業の効率化を目指していた企業が、実際のコストに削減したかというと、なかなか例をあげることはできない。私が指摘するまでもなく、社員のコストは「固定費」である。だから、その「固定費」は必ずかかってしまうものであり、時間を短くしたからといって固定費の削減につながるものではないからだ。
ゆえに、私はこのような取り組みがムダだといいたいのだろうか。
そうではない。固定費は削減できないかもしれないが、残業費(変動費)は削減できることは事実だ。それに、(残業費がほしい、という本音はあるだろうけれど)社員が早く帰宅することによるメリットは大きい。それは21世紀型の「ワークライフバランス」を実現させるからだ。「ワークライフバランス」とは、生活と仕事をうまく両立させる考え方であり、日本以外の先進国では当たり前になってきた。
コストはさほど変わらないかもしれない。しかし、社員の充実度があがれば、この取組はなかなか捨てたもんじゃない。私はトヨタ生産方式によるカイゼンを、むしろ生活カイゼンの一環としてとらえる時代がやってきている、と思う。