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交渉と脅しの臨界点(2)
見積もりの中で誤りを見つけるのならば、まだいい。
多くのバイヤーがやっているのは、「全体のコストをなんとかしてよ」とか、せいぜい「利益率のところ削ってよ」とかそんな程度だ。
もちろん、それは結局それしか削る交渉のネタを持っていないからだ。
「まっ、色々あるけど、よろしくね」というのがせいぜいだから、営業マンは最初から水増し請求してくる。
それにツッコミを入れられなかったらもうけもの、削られても元々なかったようなものだから、まぁいいや、となる。
バイヤーに必要なのは、発注決定前に全ての交渉をやりつくすことと、適当でもよいので自分なりのロジックでコストを下げる思考法を身に付けることだ、と改めて言っておかねばならない。
ただ、これを曲解してしまうと、お勉強オタクのように、サプライヤーの限界利益率とか損益分岐点とか、なんたらを使えばコストが下がると信じてしまうからバカらしい。
サプライヤーの限界利益率とか損益分岐点とかでコストが下がるはずはない。考えれば、それらの正しい数値など誰が教えてくれるというのか?
サプライヤーから、サプライヤーの限界利益率とか損益分岐点とかにしたがって、そのコストの正当性を提出させてみたって、その高いコストの正当性が届くだけだ。
・・・・
バイヤーの能力とは、コスト目標を立て、その数字に向かって、いかなる手段でも合法である限り使って達成し、平然としていることである。
そして、自分だけのロジックを持ち、自分の付加価値を最大に提供することである。
それ以外に何かあるだろうか?
そのことは、本の受け売りや、人の言葉を鵜呑みにする態度からは決して生まれ得ない。
加えていうならば、無駄な交渉をできるだけ減らし、どこまでも不条理を条理に変えていく愚直な試みから生まれる。
今までに私が見た優秀なバイヤーは例外なく、自己の屁理屈を持っていた。
究極的に正しくなくてもいい。
究極的に正しいことなどどこにもないからだ。
「確かにそうかも」と営業マンに思わせ、反論をなくし、むしろこちら側の論理に賛同させるだけの能力を磨くこと。
これ以上に大切なことなどあるだろうか?
最初に営業マンから届いた見積もりを、その基準からちょっと下げて喜んでいるバイヤーは、きっと営業マンのロジックにはまっている。
バイヤーは負けたことがないのだ。いつも負けていることを知るまでは。
「バイヤーは営業マンにわざと負けて、自分の実力を知ってみよう」