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今のままのキャリアでいいですか? ~ あの老年者のようにならないと決意する(2)
私は多くの魅力的なバイヤーを見てきた。そして、その魅力的なバイヤーが細かすぎるルールを守らないがゆえに、第一線から消えてしまう光景も見てきた。
この負け行くバイヤーを私は「常識人」と呼ぶ。そして、ルールのことを異常に詳しい人たちを私は「組織のプロ」と呼び皮肉ることにした。
あるとき、大幅な原価低減を目指し、圧倒的なコスト安価部品の採用を進める人がいた。ルールを無視したわけではなく、必要と感じたルールだけを遵守し採用にこぎつけた。
しかし、その部品が半年後に不良を起こした。
詳細内容は省くが、簡単にいえばその部品の機能レベル低下だった。私から見れば、過電流のストレスがあった可能性もあり、一概にその部品が悪いとは言えなかった。
しかし、その対策会議ではそのバイヤーの実施した、該当部品の導入プロセスのみが注目された。
「組織のプロ」たちが、ルールの素人である「常識人」を席上で責めたて、いやがらせをするといった状況が続いた後、こう言ったのだった。
「ほーらあなたはやっぱり失敗した。絶対失敗すると思ってた」
このような光景を見た年少者たちがルールを学ぶことの大切さだけを学び取ってしまい、組織のプロへと育っていく。少なくとも攻められる側にはまわりたくないからだ。
人間はいつかは失敗するから、その原因を追求されたとき、ルールの遵守が重要な調査項目となる。「常識人」は自分で考えるゆえに、無用ルールを破るときがある。それが、「社内のプロ」たちの目に留まったら大変なことになる。
そして組織はルールのためのルールをチェックするという、なんら付加価値をうめない部署をつくったりしてしまう。
私は後輩には皮肉を込めてこう言ってきた。「社内のプロになりたければ、まず購買規約等のルールに熟知することだ。そして、誰も知らないような一文を会議で発言せよ」と。そうすれば間違いなくその組織で目立ち重宝され、かつその組織でしか使えない「優秀なバイヤー」が誕生する。
もし、ルールの抜け穴を発見し、自分のチームだけにここぞとばかりに報告すれば最高だ。
しかし、そのようなバイヤーはあなたがなるべきバイヤーと正反対であるはずだ。
もう一度、なぜそのルールが必要なのか、なぜそのメーカーを新規参入させるべきなのかを自分の頭のみで納得できるまで考えること -- これが必要なのではないだろうか。
この「ルール」というものだけは担当者一人で改廃することが困難である。
ただ、少なくともそのバカバカしさに自覚的になることはできる。
・・・・
ここでお決まりのアドバイスを言うならば「ルールを熟知した実践者になること」「ルールを完璧に守るバイヤー」になること、であろう。
しかし、ここも自分の頭だけで考えて欲しい。「私はどうすべきなのだ?」「どうやったら変えることができるんだ?」。
そしてどうしても変えることが出来なかったら、そんな会社を辞めてしまってもいい。少なくともルールに縛られて、その組織でしか役立たない「特殊能力」を育てても仕方がない。
ただし、退職の手続きは「ルールにのっとって」すること。それがその組織に対する最大の皮肉になるだろうから。
まずはこう思おう。あの老年者のようにならない、と。