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仕事は8時間せず、2時間を目指す「仕事をできるだけ早く(速く)こなすために」
とここまで私が書いても、なかなか自社では「人と会わない」「電話をせず、eメールだけで済ませる」ことを徹底できないというバイヤーもいるでしょう。ただ、一個人として仕事を効率化していかねばならないことは間違いありません。8時間かかっていたことを、2時間で終わらせる――仕事を早く(速く)こなすためには色々なことが言われていますが、要するに次の三つのことです。
(1) 仕事の処理能力を高める・効率化する
さきほど書いたように、人とできるだけ会わずeメール等の手段を使う。電話を減らす。会議は素早く終わらせる。パソコンのスキルを向上させる。システムやソフトを使用し、作業を減らす。等々考えられます。
(2) 仕事を他人に任せる
チームを組み、適任者に仕事をふってしまう(ただしアドバイスはするが、口出しはしないで済むような相手に任せる)。また、仕事というものは、たいてい同じような内容を以前考えたり、資料をまとめていたりしていることがほとんどです。過去の担当者の資料を探せば、使えそうな資料がたくさん出てきます。それなのに、同じような内容を一から取り組むなんて時間がもったいない。その意味では「過去の人に任せる」ということも考えられます。
(3) 仕事自体を消してしまう
当て馬としか思っていないサプライヤーへ見積りを依頼しない、受け取らない。交渉しない。ムダと分かっている会議に参加しない。ムダな資料を作らない。等々、これはいくらでも考えられます。
これまでは、情報の入手に時間がかかりました。経営層から部長に情報が届き、課長に届き、バイヤーに届き。紙で書類の回覧が回ってきたときにはハンコが何個も押してあることがありました。しかし、eメールの誕生によって、情報が一気に経営層から末端の社員にまで届くようになりました。望む・望まないに拘らず、階層型組織がフラット化してしまう流れは止めようがありません。この流れは情報の伝達スピードを劇的に向上させ、情報が伝達される間に歪曲されることもなくなりました。これは全企業で起きていることであり、情報をすぐさま入手し、短時間でアウトプットを出すことが全社員に求められる時代の到来でもあります。
では、バイヤーはこれまで8時間かかっていたことを2時間で終わらせた後に、何をすれば良いのか、という次の質問が浮かんでくるでしょう。さっさと帰宅し大学院に通っても良い。地域社会でボランティア活動をしても良い。起業準備でも良い。家族と団欒を楽しむのも良い。現在では働き方が多様化し、在宅勤務が盛んです。育児をしながら在宅で調達・購買業をこなす人が出てこないとは限りません。あるいは、その持て余した時間で他バイヤーの領域にも踏み込んで、調達・購買の勉強の時間に使っても良い。私はどちらかというとそうしています。しかし、当然のことながら、どのように残りの時間を使うべきか、私が絶対的な答えを持っているわけではありません。
せめて、この効率性を推し進めていったときに現れる新たな時代の有り様、そして新たなバイヤー像について次項で考えてみることで、本「調達・購買実践塾」の最終講義としてみましょう。