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俗物購買よ、その汚れた顔を見せろ(1)
「そうだ!それでいい!」
あるコスト報告会のことだった。
タイトルは「購入品の輸入化によるコストダウン実例」というものだった。
輸入すると安くなる、という単純な考えが成り立たないことなど現場にいるバイヤーは誰だって知っている。
だから、本当は「輸入輸入って叫んでも、そんなに簡単に効果が出ないですよ」と言いたかった。
「輸入した品目はたくさんあったのですが、その中の多くが緊急納期に耐えることができず国際宅急便でデリバリーしたところ、ほとんどコストメリットはありませんでした」と正直に言ってしまった方がどれだけ現実を伝えるために大事だろうか。
しかし、そう言ってしまったバイヤーは「何やってるんだ」と怒られるだけ。
輸入=正=コストが安い、という神格化した絵図の前には無力だった。
その報告を予定していたバイヤーは悩んでいた。
決して効果のない輸入を正直に言うべきか、あるいはちゃんと効果が出るようにこれから内部統制を含めた改善を実施してゆくか。
バイヤーは第三の道を選んだ。
資料を偽造した。
今のコストに嘘をつくわけにはいかないから、輸入前のコストを高めに偽り、うまく輸入によって効果が得られたことにした。
その資料を持って、前述の「コストダウン実例」報告会に臨んだ。
すると、それを見たリーダーはこう言った。そのリーダーも実は輸入による効果などたいしたことないと心では思っているはずだったが。
「そうだ!そういう報告は素晴らしい!」
加えて言えば、偽造された輸入前のコストを疑う人もいなかった。