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保守点検不要論はほんとうか
先日来より、さまざまなメディアで「保守点検削減」によるコスト削減が報じられていた。内容は、これまでシステムや機器類の保守点検にお金をかけていたが、そもそも壊れることは99%ないのであるから、その保守点検費用を削減しても問題はない、というものだった(大意)。
一連のニュースを読んで考えたのは三つだった。
1. 保守点検で儲けるというビジネスモデル各社が打撃を被るだろう
2. そもそも確率論で論じるときに、「ほとんど壊れない」は当たり前である
3. 保険によるリスクヘッジが盛んになり、日本が欧米並みに近づく
ということだった。現在、OA機器から公共設備の供給者たちは、ほぼ保守点検費で儲けているといってよいと思う。最初は安価に納入する。でも、その後の保守点検費用で儲けさせてね、というモデルだ。それが崩壊するかもしれない。
ただ、私が潮流として見るのは、2と3である。確率論でいえば、「なかなか壊れない」のは当たり前であり、それを保守点検不要論に結びつけるのは「強引だ」という気がする。そもそもそんなことはわかっていて、1%の「もしかすると壊れるかもしれない」可能性を防ぐために保守点検は必要なのである。シックスシグマの考えを持ち出すまでもなく、100万分の一の可能性であっても、逆にいえば100万分の一では故障する。コアとなる設備であれば、その低い可能性であっても大損害をもたらす可能性がある。
世の中の問題は「起きたとき」に初めて注目される。ただし、ほんとうは「起きなかった」防げた問題にもっと注目されていい。
社会で問題となるのは常に「起きた」問題についてだ。しかし、この世は点検によって多くの問題が防がれていることも失念してはならない。
おそらく、万が一問題や事故が起きても、各社は「保険で対応する」ことになるだろう(上記項目の3である)。問題を防ぐことではなく、問題が起きたときにどう損害を最小化するかに意識が向く社会。それは素晴らしいものかもしれない。しかし、日本のこれまでのありようからすると、私は妙な違和感を抱いてしまうのだ。