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夏休み前に ~ 生きがいを探すということ(2)
5日が経ち、やっと終了を迎えた日。
工員が皆呼ばれて、なにやら班長さんか誰かが、何かを言っているのだ。
すると、工員に笑顔が浮かんだ。大歓声がうまれた。
そして、拍手をし、ガッツポーズをする者もいた。お互いが見つめあい、「よかった、よかった」といっているようであった。
一体何なんだ?
日本人のスタッフに聞いてみた。
すると、答えはこういうものだった。
「いやぁ、納期が間に合うか間に合わないかっていう製品があってね。なんとか、客の指示どおりのスケジュールに発送できたよ。しかも、今までに例のないくらいタイトなスケジュールで多い数量を」
まだ拍手は続いていた。
何なんだ。
これは何なんだ。
単純にそう思った。
この騒ぎは何なんだ?
・・・・
仕事の喜びを感じよう、と人は言う。
モノ作りの喜び、とはメーカー関係の人ならばよくいうことだ。
私は、真の「モノ作りの喜び」とは、このような原体験からしかのみ感じ得ないのではないかと思う。
どれだけ、バイヤー業をやっている人が、プロジェクトが終わって、このような歓喜につつまれた経験をしたことがあるだろうか?
机の前に座り、高尚なる交渉を実施しているだけの人が一体どうやってバンザイ!をすることができるだろうか?
バイヤー業の停頓感は、「バンザイの不在」にあるのではないだろうか、と私は以前書いた。
この何かを成し遂げたときのバンザイ!の不在は、つまり仕事に感動がないということである。
モノ作りの会社にあって、モノ作りをしていない、そのくせモノを恒常的に取り扱う、というアンヴィバレンツな職業としてバイヤーはある。
そのバンザイの不在は、ときとして若手にやるせなさを感じさせた。
私は非常に貴重な体験をしたと思う。
そして、いつしかあの原体験が、仕事の喜びを考える中で礎となっているものなのである。
・・・・
定年後に中国企業に再雇用された日本人を数名知っている。
ある人に、なぜ中国などに行くのですか、と聞いたことがある。
するとその人が答えた内容は、まさにこのバンザイ!を求めるものであった。
「中国には以前の日本のような伸び盛りゆえの勢いがある」
「現場の若者に教え、一緒に喜びをつくっていきたい」
「何もできなかった若者が、自分の知識の伝達で、何かができるようになるかもしれない!成長してくれるかもしれない!」
そう、おそらくこの人は、今ごろ中国の片田舎で、誰も経験できないバンザイ!をやっているのだろう。
そして、いずれ現代自動車や中国メーカー躍進の秘密は、実はトヨタやその他の有名日系企業の人材流出によるものだ、ということが明らかになっていくだろう。
「人はいつでも、バンザイを求めたい」