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外より中を!!正しく知るということ(2)
昔から日本の製造業を中心に広がっている「QCサークル活動」は、現状の困りごとから科学的に現状分析をし、解決策を見出し、効果を測定する試みである。
このQCサークルについては様々な意見があるが、製造業へある一定の好効果をもたらし続けていたことは否定できない。
ただし、このQCサークル活動の中では、このQCサークルの存在意義自体が、もっと言えば「もはやQCサークルなどは時代の長物ではないか」といった疑問が、問われることなど絶対にない。
一つの枠の中に入っている人は、その枠組み自体を根本的に疑うことなどできないからだ。
だから、愛社精神にあふれている、といわれている前述の百貨店の上層部は、自社の従業員が最も万引きをしているなどとは思いもつかなかった。
バイヤーの世界にどっぷり漬かっている人であれば、自分の業務が当たり前すぎて、コストダウンの障壁が実は社内の中にあることなど思いもつかない。
そして、コストダウンをせずに、自己の理屈だけで高い買い物に納得していることを、おかしいとも思わなくなる。
自分のお金だったら、そういう買い物をするだろうか、という至極まっとうな質問すら受け入れることができなくなる。
自社にいたはずの敵は、いつかしら自分をも蝕んでいくようになる。
社内と自分の体質を疑えない体となってしまう。
最大の敵は自分、ということになってしまう。
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おそらく自分のやっていることを、一日に一回「これって常識的かなぁ」と自問することができれば、バイヤーは変わることが出来る。
面白い例を挙げる。
トム・ピーターズは著作の中で、ウォルマートについてふれたことがある。
ウォールマートでは社内コンテストがあるという。
そのコンテストではあらゆる種類の賞金や景品があるようなのだが、そのコンテストは「自分たちが社内で行っている最もバカげた行為」を見つけ出すことだという。
外部から、何かを見つけようとするのではなく。
外部から、何か刺激剤を投入するのではなく。
自分たちの内部をまずしっかりと見渡し、一般常識から判断してバカげた、改善すべき内容と考えをどんどん排除する試み。
これはなんと清々しい試みだろうか。
バイヤーだって、高尚な知識を入れるよりも、中国供給にこだわらずとも、オークション導入を急がずとも、まず最初に自社内の整備からやるべきではないだろうか。
自社を見つめて、徒労に終わる可能性のある社内改善であっても、まずはそれをやるべきではないだろうか。
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「官が腐っている」というとき、多くの人は「民も腐っている」ということを思いもつかない。
私は、官の人間も知っているが、民の方がよほど腐ったことをしているときがある。
接待に呼ばれ、嬉しがっているバイヤー。あるときは自ら要求しているバイヤーの姿を知っている私にとっては、多くの購買・資材部の持つ倫理規定など笑ってしまうときがある。
コストダウンが進まないのも、納期遅延で走り回っているのも、サプライヤーの責任ではなく、外部の責任ではなく、自社と自己にあるのではないだろうか。
コストダウンが進まないのは、サプライヤーと馴れ合っている自分にあるのではないか。
自己の内なる敵を見つけ、自己を絶えず否定できるバイヤーは、きっと世界一になれる。
「バイヤーは絶望から出発しよう!!」