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安けりゃいいのか、高くてもいいのか(1)
「それは購買のマスターベーションだ!!」
ある会社の本社、東京。
その日、全国の代表バイヤーが集まり、購買戦略会議が行われていた。
いや、行われているだけならば、どの企業だってある。
その戦略会議は、はじめて購買戦略の構想のシェアを、設計のトップとも共有しよう、というものだった。
会議を取り仕切るベテランバイヤーは、流暢な口調で購買戦略を語りだした。
手馴れた説明。そして、どれだけ時間を掛けたか分からないくらいの凝りに凝ったプレゼンテーション。
購買サイドの説明は完璧だった。
しかし、設計トップの顔は曇っている。
購買の出してきた戦略があまりに、空想上のものであり、全く実効性のないものに思えてしまったからだ。
説明が終了後、感想を求められた設計トップは、まず皮肉からスタートした。
「えっ、感想ですか」
もちろんその皮肉は前フリだった。
続けてこう言った。「こういう会話ばかり、購買さんの中でなさっているんですね」
「全く、無意味です。これは、購買さんのマスターベーションですよ」
・・・・
購買の仕事は、安く買ってくることだ、と人は言う。
もちろんその定義づけに口を挟むつもりなどない。
そして、人々は言う。
購買の仕事は、安く高品質なものをリーズナブルにタイムリーに買ってくることだ、と。
定義をつけたらいっちょう終わり。
何かを語っているようで、全く何も語っていない。
この観点は繰り返し正しい。
だけれど、たとえ高かったって、それ以上の売価をもたらす製品だってある。
それを無視して、単に安価さだけを追い求めていれば、それは机上の空論となってしまう。
現実の開発現場では何にたいして困っているのか。困っていないのか。
それを分からず、安いものだけをズラっと並べて、「はい、この中から設計者よ、使ってください」では意味がない。
それは「購買のマスターベーション」なのだ。