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安すぎて困るバイヤー
「えっ?! ×××××円だって?冗談でしょ?」
毎週行っている海外のグループ会社との電話会議での話。これまでの日本での購入金額データだけでなく、最近現地で入手した金額レベルとも大きく異なる見積価格に一同驚いている。それは、喜びに満ち満ちて・・・・・・というわけではなく、どちらかと言えば困惑に近い雰囲気だ。出席者が考えていること、それは「本当にその金額で製作可能なのか?」ということだ。
製作できるメーカーの発掘に苦労し、その苦労が逆に仇となって、サプライヤーから足元を見られるような価格提示を受け、やむを得ず受け入れる・・・・・・そんな価格プロセスを経験したバイヤーからすれば、まさに晴天の霹靂である。でも、ここからの対応でバイヤーの真価が問われると言っても良い。
安い価格の提示は来では喜ぶべき話だ。ただ、これまで付き合ってきたサプライヤーとの関係を慮ることで、時にバイヤーに厄介な存在となるケースがあるようである。私は、仕様的にも品質的にも遜色がないと判断できれば、とりあえずサプライヤーを変更する。実際は、このようなケースでの半分以上が、あれが抜けている、これが不十分と、値差に相当する歴然とした仕様の差が存在していて、発注までたどり着くことはできない。でも、本当に安価なのかどうか?を確認するのも、バイヤーの重要な役目である。安価な金額提示を、最初から全幅の信頼を置いてもダメだし、否定という色眼鏡で見るのも良くない。こういう場合にバイヤーに求められるのは、いかにフェアーに、いかにフラットでいられるか?そのようなスタンスを維持しつつ、その後の的確なアクションを起こせるかどうか?だと思っている。
事と次第によっては、今までの購入価格を否定されることもある。今までの価格に自信を持っていたバイヤーであれば尚更、安い金額提示はショックである。でも、バイヤーひとりで担当製品の全てのサプライヤーを網羅し、安価で最適な発注ができていることなどありえないのだ。自分でできる限りのことをした、そしてQCDFの観点で最適なサプライヤー選定を行って、価格も決めた。但し、自分がコンタクトした範囲は限られているし、最適と判断した瞬間から、その判断は陳腐化が始まる。そう思っていれば、大幅に安価な金額提示があっても、その瞬間から新たな最適解を求めてゆけばいいのだ。現状の最適解が、未来永劫最適解であるはずがない、バイヤーはこう考えることを決して忘れてはならないと思う。
バイヤーは何と戦うべきなのか?もう一度言おう。どんなに自信のあるバイヤーであっても、マーケットの全ての情報の網羅は不可能だ。そういう不完全な状態で仕事をしていることを充分に認識して、新たな情報に対し、決して色眼鏡で見ないことが、何よりも重要なバイヤーのスタンスになる。バイヤーが戦うべき相手は、過去に最適解を導いたという自分ではないか?と思う。その自分という相手に、いかに勇猛果敢に戦いを挑めるかどうかで、バイヤーたる価値が決まる、そう思っている。