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定年後に見向きもされないバイヤーになるために(1)
「駅前の自転車整理しか仕事がなかったよ」
土産をもって昔の職場にくる老年者。
60歳になり、定年を迎えたある元バイヤーは、他に行く場所もなく昔の職場に頻繁に足を運んでいた。
老年者は、なぜあれほどまでに自分の「卒業」した職場に足を運びたくなるのだろうか。
最初は、皆も気をつかってくれて、「最近いかがですか?」などという言葉をかけてくれる。しかし、2回目、3回目からは、もうその人が来ること自体が迷惑になってしまう。
早い話が、もう現役のバイヤーたちにとっては、定年者がくることは仕事の邪魔でしかないのだ。
あるとき、私はその老年者に聞いたことがあった。「そんなに元気であれば、何か仕事を見つけられたらどうですか?」と。
婉曲ながら、もう仕事の邪魔をされぬように質問したのだった。
すると、その老年者は、哀しくもそう答えた。
「仕事探しに行ってもねぇ、駅前の自転車整理しかなかったよ」と。
・・・・
2007年には多くの団塊の世代のビジネスマンが定年を迎えるピークとなる。
定年を望んでいる人もいるが、多くの場合定年後に「することがなにもなく」、しかも、仕事を探しても何もできない自分の実力に思い当たり、ガードマンか駅前の自転車整理しかないことに気づくのだ。
しかも、奥さんはカルチャースクールに、地域の仲間たちとの会合。
結局、残された夫は、何もできず、どこにも相手がいないことを知るのだ。
現役時代ずっと偉そうにしていたバイヤーなどだれも相手にしてくれる人などいない。ただ、「邪魔な奴がいなくなった」と、サプライヤーからも同じ社内からも喜ばれて終わりなのだ。
スキルもなく、一体なんだったのだろう、と考えてもしかたがない。よく言われるジョークのように「部長できます」とハローワークで伝えても、笑われるだけがオチだ。
そして行き場のないバイヤーは、元の職場に土産をもって向かうのだった。