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年末年始読書案内(坂口孝則)
年末になりました。恒例の読書案内をお送りします。ただ、昨年と異なり、二つのカテゴリにわけてお伝えしましょう。一つは、2011年発売の本で面白かった3冊。そして、もう一つが、2011年に発売されていないものの、私(坂口)が2011年に読んで面白かった3冊です。
できるかぎり入手可能なものを選択しました。ご実家に帰る際に本屋でお買い求めいただくか、あるいはamazonなどのネット書店でお買い求めください。
では、よろしくお願いします。
・2011年発売の本で面白かった3冊
1.実学 中小企業のパーフェクト会計
→岡本先生の会計実務の決定版。3,360円もします(笑)。しかし、有益な情報とはこれくらいですよね。ちなみに、ご自身は、1万円で販売すればよかった、とおっしゃっています。同書の内容は、中小企業の会計実務から財務会計と管理会計の橋渡しなど(そして制度会計の問題点などを含め)網羅的に中小企業会計実務が理解できるものです。中小のサプライヤー管理にもこれさえあれば大丈夫でしょう。
2.日本のものづくり競争力基盤の変遷
→3,675円もします(笑)。これは普通の方にはあまりオススメしませんが、製造業の進展と没落(とは書かれていませんが)を俯瞰的にかつ統計的に理解するには素晴らしい本。途中の米国と日本の自動車メーカーのサプライヤー管理については、一部「?」ではあるものの、研究開発費と企業発展の問題まで網羅的に語られています。
3.大震災の後で人生について語るということ
→やっと一般書です。橘玲さんの待望の新作。おそろしいほどの美文と読ませる文章。震災後に人生論を語るものは他にもありました。ただ、これはどこか決定版のように感じられます。 ちなみに、橘玲さんと私の文体が似ていると指摘する人がいるものの、それは間違い。私が一方的に「好き」なだけです。山崎浩一さん、橘玲さん、森博嗣さん、開高健さん、小田嶋隆さん、辺見庸さん……。新しいところでいえば、福岡伸一さんなどでしょうか。特に前者の3名の本を読めば、私がどれくらい影響を受けているかわかるでしょう。余談が長すぎました。一つの文章として、もっとも刺激的だった本です。
・2011年に私(坂口)が2011年に読んで面白かった3冊
1.翔太と猫のインサイトの夏休み
→永井均先生の名著が文庫本になったので数年ぶりに読み返したところ、新たな発見がたくさんありました。大人の人にこそ読んでほしい傑作。「自分が見ているものは、自分がつくった幻想にすぎないのではないか」「なぜ悪いことをしてはいけないのか」「自分が生まれてきたことに意味はあるのか」それらの疑問を、根源的に考えていくレッスン。もちろん、永井先生ゆえに、一筋縄ではいきません。社会の常識からあまりに離れていたとしても、それを結論とする勇気には、私は何度となく励まされました。子供ではなく、大人のための課題図書として。
2.逝きし世の面影
→これまでの一般的な日本文化論を覆す、開国当時の日本人論。日本人は明るく、そして、あまりに親切で西洋人たちを驚かせる連続だったようです。読んでいて勇気が出る、そして、日本人であることを誇りに思った一冊。それにしても長い。この人は、在野にいながら、これだけの研究を重ねたのかと驚愕しました。しかも美文家。
3.「世論(上)」「世論(下)」「大衆の反逆」
→古典的社会論3冊。大学生時代に読んだということは、十数年ぶりに読み返したことになります。格差社会やら、社会の停滞やら、世論とナショナリズムやら、なるほど、こんな古典にすべて書き尽くされているとは。これ以降の社会論など、ほとんどこれらの焼き直しに過ぎないのではないかとすら思わせます。ちなみに、私の「思考停止ビジネス」でもオルテガやエーリッヒ・フロムの社会論を現代風にアレンジしたものでした(あれほど露骨にパロディ化しているのに、誰も指摘していただけませんでしたが)。
いま、本を月に一冊でも買って読破する人は、全人口の1%もいないのではないかとすら思います。読書離れであっても、活字離れではありません。スマホやパソコンの画面には活字があふれています。ただ、せっかく活字に触れるのであれば、一人の人間が考えぬいた果実(すなわち著書)に触れることが、他から抜きん出るカンタンな方法ではないかと思うのです。