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年末暴言『調達とジャパニーズドリーム』
この前、非常に面白いデータを見ました。米国でのデータです。米国で働く
ひとたちは、白人、黒人、ヒスパニック、アジアなどさまざまなひとたちが
います。文字通り「人種のるつぼ」です。そこで、アジア人女性がどれくら
い稼いでいるでしょうか。なんと収入ベースでいうと、白人女性よりもアジ
ア人女性のほうが稼いでいます。対比でいうと106%です。
女性だけが優秀でしょうか。いえ、違います。アジア人男性も稼いでいます。
白人男性に比べると、白人男性以上に稼いでいます。対比でいうと117%
にいたります。黒人は教育の問題や親の問題があります。また、アジア人は、
わざわざ米国に来ているくらいだから、白人一般よりも優秀なのは当たり前
だ。そんな反論もあるでしょう。
しかし、私はここに希望を見ます。異国の地で、さまざまな差別や桎梏、制
約はあろうとも、アジア人が比較優位な収入を稼いでいるのです。さらにア
ジア人のなかで、とくに優れた収入を得ているのは、統計上、日系人です。
米国では「アメリカンドリーム」なる単語があります。なるほど、そのドリ
ームの定義しだいですが、収入からいうと平均以上を稼ぐのは、もはや夢で
はないことになります。私は、ここから単純な「日本人優秀論」を導きたい
わけではありません。米国人でも優秀なやつはいるし、華僑のひとたちは明
らかに優秀です。日本人でも残念なひとたちはたくさんいます。
ただ、人種としてアジア人が劣っているわけはない、という当たり前の事実
を示したかっただけです。さて、ここから私は話を飛躍させたいと思います。
私たちの特技は、細やかさと、勤勉さと、そして長時間労働を厭わぬ仕事好
きといわれてきました。ただ、そのうえで、国際的な競争力が(個人ではな
く)企業やGDPとして低くなってきたのは事実です。個人は活躍できる場
所さえあれば優秀なのにどうすればいいのか。
そこで私が勧めたいのは、これからサプライヤに真なる改善指導を行うこと
です。現場での改善や、見積書を指摘しながらの指導は、調達担当者からサ
プライヤに日々のように行われています。そのミクロな取り組みとは別に、
マクロな指摘も行う時代がやってきています。具体的にはどうすればいいか。
私は、上位ランクのサプライヤにすべて出資をすべきだと考えます。可能な
らば株式の20%以上。
もはやすべてのサプライヤを食わせられる時代は終わっています。少数のサ
プライヤに出資する。そうして、経営レベルでの生産性改善を申し入れてい
く。ご存知とは思いますが、株主になってしまえば、サプライヤが溜め込む
利益剰余金は株主のものです。それは堂々と、株主配当か一時金として「よ
こせ」と調達担当者はいえます。
サプライヤがいやであれば、その利益剰余金(儲けてそのまま内部に留保す
るお金)を設備投資なり、あるいはコスト競争力強化のために使わねばなり
ません。これはスタンダードです。そして、そのサプライヤ管理の細やかさ
こそ、日本人の優秀さを発揮できる点だと私は思います。サプライヤをでき
るだけ資本的に飲み込むこと。そうすれば、外部改善が内部改善にすり替わ
ります。
また、それは調達担当者に外部経営指導員としての新たなミッションを加え
ることにほかなりません。それこそが調達業務を経験したのちに、スキルと
して残る成果物ではないかと私は思います。そうじゃないと、「調達は数年
ほど経験したけど、特にスキルというものは残っていないな」という戯言か
ら逃れられません。
現場のミクロな改善とともに、マクロな改善も行う。これこそが「すり合わ
せ」が得意な日本人調達が可能な道ではないでしょうか。そして、この経験
は、調達担当者が将来、経営層になる際に大きな力となるに違いありません。
新たなジャパニーズドリームがはじまります。