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彼女が中国に目覚めたら(2)
さらに、よくないことはプロジェクトの人間(=私)と実務担当者(=品目のバイヤー)が異なったことだ。
私が、その中国製品の採用を推進していたとき、一方ではその実務担当者はその中国サプライヤーの見積もりを片手に現行の日本のサプライヤーの価格交渉をしていた。
要するに、安い見積もりをチラつかせて現行コストを下げようとしていたのだ。
「バカな」と私は思った。
それでは、「今私が行っていることは、単に当て馬見積もりを作り上げていることじゃないか」と思ったのだ。
そのことを実務担当者に言いにいくと、年上のそのバイヤーは言い切った。
「だって、これが一番コストダウンする近道だろ」と。
「それは、相手に説明がつかない」と反論してみてもムダだった。「高い見積もりのものを採用したって、仕方ないだろ」と言われるだけだった。
その後、私は散々書類を出させた挙句、中国のそのサプライヤーに対して「当初は安いと言っていたが、やっぱり安くないので採用検討を中止したい」という通常では理解することができない(と私も思っていた)内容の連絡をした。
きっと、もうそのサプライヤーは付き合ってくれることはないだろう。
その後、このことをある先輩バイヤーに相談したが、そのときも「でも下がったってことは効果があったじゃない」と言われた。
私は「そんなに当て馬見積もりが欲しければ、偽造すればいいじゃないですか」
私はこのとき言ったことは今でも正しいと思っている。必死に見積もりを出してくるサプライヤーをダシに使うよりも、偽造した方がマシだからだ。
・・・・
バイヤーの真の目的は、海外調達額を増やすことでは決してない。
短期的なコストダウンを、当て馬見積もりによって成し遂げることでも決してない。
まずは、何をどうするのかを強く決定するべきではないか。
中国サプライヤーと心中してでも良いものを作り上げていく決心をするのか。あるいは、短期的なコストダウンなど目もくれず、日本生産の購入品については日本のサプライヤーから購入するのか。
そして、企業文化のようにその決定事項を社内に広く、そして強く浸透させるべきではないか。
そう、中国調達ありきで進めるのでは意味がない。
もっと言えば、担当者の間でコミットされていなければ、面倒な担当者からはどうしても「中国調達できない理由」しか出てこない。ダメな理由をいくら出させても全く意味がない。
一体、企業はどれだけバイヤーの中国への旅費をムダしたら気付くのだろうか。
やるときは本気でやる。
まさに、それは購買を日本の中だけに留めるのか、海外を視野に入れた活動を展開していくかの、一つの大きな意思決定にほかならない。
「バイヤーは当て馬見積もりをシュレッダーにぶち込め!!」