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忘れたい交渉
私も過去には消し去りたい思い出・・・思い出したくもない出来事もある。そんな思い出の中でピカイチなのが、バイヤーになりたての頃、当時の先輩を見習ってやってみた交渉である。キーワードは「気にくわない・・・」
当時、今とは異なる製品を担当していた。比較的珍しい商品で、購買担当としてもやりがいのある製品であった。(今週は旬な事業です)そのころの私の上司は、私の理想のバイヤーの真逆を行く存在で、約束は守らない、恫喝はする、主張も結構無茶苦茶と、今は反面教師として深く心に残っている上司である。
そんな人から仕事を引き継いだわけであるから、サプライヤーとの信頼関係なんてあったもんじゃ無い状況で各担当を引き継いだ。こっちも無茶ならあっちも無茶って感じで、私はどうやって信頼関係を作るか・・・なんて事までは考える余裕もなく、どうやったら仕事を前に進められるか?なんて事ばかり考えていた。
しかしバイヤーになりたてで、どうやって交渉するか?なんて考えていた当時で、各担当者との交渉が非常におっくうな時期でもあった。そんな中でやってきたとある1社。その上司から引き継いだサプライヤーの中でも、ある意味筋金入りで信頼関係を築けていない相手である。私が悩んだのは、信頼関係も何もなくても結構こっちの主張は、私の上司が交渉をすると何故か受け入れられていた点。全く理由がわからなかった。
今から考えれば相当悩んでいた中、とある1社との交渉を迎えた。人間追い込まれると何をしでかすかわからない・・・私はそのとき、当時の上司を反面でなく正面から見習って交渉を行ってみたのである。相手の主張に全く汲みすることなく、当方の予算を主張し、先方の主張にはしったこっちゃないとの態度と言葉。非常に高圧的で傲慢な態度で接して、最後の決めの一言が、
「いろいろ言ったところでさ、結局こっちの言い値で決まることになるんだから、そろそろもうやめようよ。だいたい、気にくわないんだよね~そっちの言い分もなにもかも」
こうやって書いても、当時の相手の「はぁ~?!」と呆気にとられて、こいつ何いってんだ?!という寒い空気が思い出される。そのサプライヤーの担当者は何も言わなかった。言えなかったんだろう・・・ただその心情は、その場の空気が示していた。
いろいろな場面で・・・当然口げんかをしたこともある。ただそのときのしらぁ~っとした空気は、今でも忘れられないくらいに寒かった。でもその言ったときは、その寒さの意味がわからなかった。数年を経過して気付いたのである。
当時・・・自分でもあきれている。なんでそんなことを言ったのか?その経験は反面教師として自分の中に今でもあるが、何とも苦々しい思い出である。
ちなみに「気にくわない」との言葉は、それ以降一度も使っていない。