捏造と創造(1)

捏造と創造(1)

「もう!!気が狂いますよ!!」

その営業マンはバイヤーに対して叫びの声を上げた。

次から次に来るバイヤーからの見積書の催促メール。

しかも、約束の時間より1時間遅れただけにもかかわらず6通ものメールがバイヤーから届いていた。

パソコンで違う仕事をやっていた営業マンは、続々とくるメールの文面が気になってしまう。

「5月9日にお願いしていた、ケーブルのお見積がまだ届きません。至急送付してください」というメールなのだ。

バイヤーにとってみれば、前回打合せしたときに両者で合意していた期限に遅れたのだから、そのような催促を受けても当然だろう、という口調になっていた。

「いや、分かるんです。こちらが遅れているっていうのは。でも、あまりにしつこくされても、どうしようもないんです」

と、その営業マンは言うのだった。

それに対してバイヤーは「では、フォローメールはSTOPしましょう。でも、遅れてるって分かっているんだったら、なぜ事前に言ってくれないのですか?確か、御社の基本理念にもありますが、『誠実な行動と』・・・」、と言おうとしたときに営業マンから発言を止められた。

そのバイヤー得意の「正論」をあえて前面に出すことで反論を出させないようにしようとしたときだった。

「止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい!もう、気がおかしくなります!」

なんと3回もその営業マンは同じ言葉を繰り返したのだった。

・・・・

そのバイヤーは私だった。

この話をすると聞いている人は、たいてい二通りに分かれる。

「そこまでフォローするのはやりすぎだ」と呆れる人と、笑いながら「そこまでやれば、営業マンも次回以降ヘタなことはできないね」とある意味感心してくれる人だ。

しかし、話の続きをすると、たいていは「そんなことするな」と言われる。(いや、若干ながら笑ってくれた人もいるのだが)

実は、私はメールソフトOUTLOOKのVBA(プログラミング)を習得し、約束していた時間から1分でも遅れると、自動的に催促のメッセージが送られるソフトを作っていたのだった。

プログラムのソースを少し変えれば、10分おきから5分おきに送付するようにも変更できる。

メッセージも「○○の件で○日にいただくことになっていた○○がまだ届いておりません」と生成される。

1分おきにメールするとすれば、それはさながらウィルスメールのようになって営業マンに送付されていたのだった。

OUTLOOKのVBAはまだ一般的ではないが、洋書を探せばなかなかよい本があるので、興味のある方は読んでみるといい。

私に書類を出すのを忘れて一週間出張に行ってしまった営業マンは「300通の催促メールが届いていた」と笑った。

こういうことを書くので、私に初めて会う人は「とても冷たく、恐い人かと思っていた」と言う。しかし、事実はまるで逆。今では、できるだけ人には優しく接している。

だが、私はそのソフトを作った入社一年目には「どんなことがあっても目標をやり遂げる」という使命感を持っていた。

当時の上司からは、「莫迦(ばか)野郎」と怒られた。

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