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新たな共同調達という流れ
先日、朝日新聞社とパナソニックは両社共同による物流を開始することを発表した。朝日新聞社の車両を使って、パナソニックの製品・サービス部品を運ぶという。同じく発表では、共同輸送によって空回送距離の短縮と、低公害車による環境負荷低減を目指すとのことだった。両社のこの発表は、新たな共同調達のあり方を象徴している。
(1)これまで同業種内で、競合他社と実施していた共同調達が、業界の垣根を超えた取り組みになっていること
(2)以前メディアで報じられた異業種間「競争」は異業種間「協業」に発展し、SCM観点から環境対策に取り組む企業が増えてくるであろうこと
(3)コスト削減効果の観点を脱し、CO2削減の指標がこれまでに増して重要になってくること
そこで、やはりここではまず(1)に注目したい。まったくの異業種間の共同調達の潮流である。これまで、共同調達をする際に同業者間のものが一般的だった。電機メーカーや建機などの例を取りあげるまでもなく、上層部主導あるいは調達・購買部門主導であったために、どうしても同業種協力の共同調達が一般的だったのだ。
しかし、考えてみれば物流などであれば同業種だけで行わなければいけないという決まりはない。特に製造業であれば、製造拠点が局地化しているところも多いために、どうしても配送経路にムダが出てしまうことは避けられない。
この共同調達の例が指し示すのは、「情報購買」というものの新たな姿でもある。これまで、情報とは「競合他社情報」のことであった。しかし、これからは同業種・競合他社に関わりのない、広い意味での情報が必要となる。情報購買の大切さのほんとうの意味は、これから始まるのである。
l 日本の金型技術者に明日はあるのか
ロイターが報じたところによると、日本の金型技術は海外に流出し、さらに日本の金型メーカー自体も買収の対象にさらされているという。同じく、ロイターは某社の「自動車メーカー内で技術者より購買担当者の権限が強くなり、1円でも安い金型を使うため海外製を使う傾向が出てきた」という発言も報じていた。
これを3点から論じてみよう。
(1)金型はそもそも海外流出しやすいコスト構造を持っていること
(2)自動車メーカー内の購買担当者の権限が強くなったことは一側面にすぎないこと
(3)金型技術者の活躍先は日本だけではないこと
さほど知られていないが、金型に占める材料費率はきわめて低く、そのほとんどが加工費(減価償却費・労務費)である。そこがまさに日本の金型職人の付加価値であった。低い材料費をもとに、加工を施すことによって、精度の良い高価な金型に仕上げるのである。だから逆に海外の金型技術レベルが上がっていくということは、その分の加工費が安価にできるということでもある。材料費が大半を占める部品とは異なり、金型の場合は加工費が大半であったことから、代替されやすい構造であった。
ただし、そのような安価な金型にシフトしていったのは(2)の要因ばかりではない。もちろん、購買担当者はコスト低減に敏感ではある。ただし、より大きい要因は自動車メーカーの少量多品種化である。少量多品種化にあっては、一機種に配賦される金型費が高くならざるを得ない。1000万円の金型を使用し、10万台販売できるのであれば一台あたり100円にすぎないが、1000台しか販売できないのであれば一台あたり1万円にもなる。
ただし、産業構造の空洞化とは別に(3)も考慮せねばならない。というのもロイターが伝えている通り、日本の金型技術者は海外の企業に「転職」している例もあるからだ。すなわち、一見すると日本の金型産業が弱くなっているかのように感じられるが、実際は日本の金型技術者が海外に移行しただけ、という見方ができる。日本の金型メーカーは弱くなっているものの、一方でその日本の金型「技術」を活用している海外金型メーカーは増えている。この問題は多岐にわたる。それは、「メイド・イン・ジャパン」の金型を守りたいのか、「メイド・バイ・ジャパン」の金型を守りたいかの議論を包括するからである。