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構造が精神を超越する。(1)
「わたしたちは設計の小間使いですから」
購買部門の説明会のとき。
対外的なPR会であったその席で、参加者が質問をした。
「御社の購買部門ってどんな活動をなさっているんですか?」
すると、その場に明らかにふさわしくない購買部員が即答した。
その購買部員は、顔から「こんなくだらねぇPR会にいるほど暇じゃねぇんだよ」という気持ちが推し量られたし、そのような表情を「自然に」できてしまうくらい、バイヤー業独特の厚かましさが感じられた。
「仕事って、購買ってさ、設計の小間使いよ」
そんな、みもふたもない回答に、その場にいた参加者は苦笑するしかなかった。
「小間使い」
そのアナクロなさまが逆に真実味をもって感じられたのだ。
そして、加えてこう言った。
「設計者の近くに席があんの。それで、図面印刷するとか、部品のカタログ調べるとか、なんでもやるの。それくらいやんなきゃ、仕事はわからない」
妙に参加者のうちの一人は納得してしまった。
・・・・
上記エピソードは私が、ある企業に研修か何かで行ったときのことだ。
その妙に納得した参加者も私だった。
その企業が面白いところは、「購買部門が小間使いなんて、だからダメ」な会社では全くなく、当時は超高利益の優良企業だったことだ。
購買部門の活躍も新聞紙上で「今期も原価低減活動が実を結び~」なんてことがたくさん載っていた企業だ。
だから私は驚いた。
そして、同時に納得してしまった。
加えて、上記の発言が、一流のレトリックを含んでいるのではないかと思うに至ったわけだ。
・・・・
現在は仕事の「e」化が進んでいる。
設計者ともサプライヤーとも関係部門とも、全てメールで済んでしまう時代だ。
もちろん、その流れは否定するべきではなく、歓迎すべきことだ。
実際に一度も会うことなく、仕事が完了してしまうことも多々ある。
しかし、である。
あえて仮説を述べる。
「メーカーの場合、設計者とバイヤーの席の(実際の)距離が近ければ近いほどモノは安く買えるのではないか」
これは流布しているeコマース取引とは逆の主張である。
構造が精神を変える。
そして、その精神は果てに、企業の利益となって表れる。
表面だけコストダウンが実行されたように見えても、実質は何にも安くなっていない企業は設計とバイヤーの距離(繰り返し、実際の距離)が遠いのではないか、と再度仮説を投げておく。
以前ある企業の方からこのような話を聞いた。
「以前は小さな会社だったので、設計と購買が同じフロアだった。そのときは夜中までワイワイやりながら一丸となっていた。だけれど、会社が大きくなって設計と購買のフロアがわかれてから一変した。新たに入ってくるバイヤーは、そもそもモノに興味を無くし、設計の思考も学ばず、パソコンのやりとりだけでどこまでも合理的に済ませるようになった。これが現在の停滞の原因かもしれない」
あくまでも、仮説であるが、私の仮説を前提に考えると、あまりに興味深かった。