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海外とのギャップ。あるべき姿とのギャップ。(1)
「そんなに金がないなら、安ホテル紹介するよ」
香港の会議室。
光ケーブルの企業の社長は、日本からやってきた若者バイヤーと机を向かい合わせ座っていた。
若者は、今度自社製品のルーターに採用することになったSCコネクタ付きの光ケーブルの交渉を実施していた。
どうか、この目標コストにしなければいけない。
どうか、交渉を成功させて、日本にいる上司に報告せねばならない。
そして早くこの香港の夜に飛び出さねばならない。
そう思った若者は焦っていた。
この香港企業の社長は、全く理解できないでいたからだ。
なぜ、各社間で競り勝ったコストを、これより下げねばならないのか、と。なぜ発注者の「予算」などという意味不明な理由でコストを下げねばならないのか、と。
もちろん、若者には理由などなかった。
とりあえず分かっていることは、自分には目標コストがあるだけだった。誰かが計算した結果、光ケーブルはそのコストで買わねばならない。そこには目的だけがあり、根拠などなかった。
そして若者は言わざるをえなかった。
「このコストにしてもらわないと日本に帰れません」
すると、社長は冷静に言うのだった。
「じゃぁ、そんなにお金がないなら、安いホテルでも紹介するよ」
・・・・
バイヤーの世界は不思議にあふれている。
いや、不思議なのはバイヤーの世界だけでの話だ。
受注者側には全く分からない、「目標コスト」なるものが突然現れ、それを絶対目的かのように交渉される。
発注後に交渉、なんてのもある。
何でそのサプライヤーに発注決定したのか?
それはもちろん各種の条件に満足したからだ。それゆえに発注したのだ。
と普通は考えるし、常識だ。
誰だって、衣服店でレジで商品をつきだして、梱包してもらったあとに価格交渉する奴などいない。
だけれど、ビジネスでバイヤーをやっている場合は、発注後のコストダウン要請がよくあるのだ。
そんな下らないことを、立場を利用して言ってしまうバイヤーがいる。
もちろん、私も最初はそのような不合理が、不合理として分からなかった。
香港の社長の前に座っていたのは私だった。