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海外調達という古くて新たなテーマ
先日報道された内容によると、日立製作所は生産コストを30~40%低減する目標だという。その目標達成にむけ、重点施策として取り組むのは部品の海外調達だそうだ。このことであれば、いまさら驚くに値しない。しかし、その目標率がかなり高い。現時点では、海外調達率は25%程度でしかない。それを50%に引き上げるという。
完成品のコストを30%下げなければ、海外勢との競争に勝つことはできない。このリアルな現状から導き出されたのが、海外調達率50%への引き上げだった。
日立製作所が例にだしているのは、火力発電等の電力事業だ。少しでも電力事業に関わった人であれば、この領域で海外調達品を使うことがいかに難しいかを知っている。これまでは品質保証や納期保証の点からなかなか海外調達品の採用が進まなかった。
私は、「海外調達を実施するだけで魔法の杖のようにコストが下がる」という考えには反対である。なぜなら、試験などのトータルコストを考えれば、コストアップにつながることもあるからだ。また、日本国内でも安いところはたくさんあるので、それをすっとばして海外調達に進むのはいささか早計だと思うからだ。
しかし、海外調達における、労務費のコスト安が魅力的なことには違いない。コンポーネンツパーツのような組立(アッセンブリ)がコストの多くを占める部品であれば、海外調達の利点は高まるだろう。
問題は、海外調達を実施する企業の、むしろ社内にあるのではないか。海外調達は古くからのテーマではあったものの、なかなか上手くいかないのが現実だ。それには、海外調達が、どちらかといえば調達・購買部門の一方的な思いに過ぎず、社内合意がえられていなかったことにある。
おそらく日立製作所のトップが自ら海外調達の率にまで言及して、引き上げを宣言したのは社内啓蒙の一環でもあったのではないか。海外調達は古くて新しいテーマだ。それは社内をいかに動かし一丸となれるかという意味で、組織意識改革の取り組みでもある。同社がその取り組みの嚆矢となることを願っている。