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漠然とした不安
いつからだろう。私たちは漠然とした不安にさいなまれている。調達・購買担当者の人たちと話しても「なんとなく将来が不安なんです」というフレーズが無関係のときはない。
先日、このような話を聞いた。主人公は某有名芸能人と、某ホテルのオーナーである。某芸能人に魅了された某ホテルのオーナーは、その某芸能人を自分のホテル専属にしたい、と願った(「某」ばかりですまない)。専属化の交渉のとき、一つのカードを使った。
芸能人たちは、漠然とした不安にからみとられている。その不安とは「明日仕事がなくなってしまうのではないか」という不安である。そのことを悟ったオーナーは、交渉時に「5年間の仕事を保証する」としておいた。
単なる専属化ではYESといわないかもしれない。ただし、5年間も仕事があるのだ。この芸能人は即YESと回答し、すぐさま契約書にサインしたという。5年間をそのホテルだけに費やしても、漠然とした不安から逃れられる道を選択したのである。
その某有名芸能人は、テレビから消え、ただそのホテルで今日もショーを繰り返している。もちろん、テレビに出たほうが一回あたりのギャラはよかっただろう。しかし、不安と伴走し続けることは誰にとってもつらい。
これは笑い話だろうか、と考えてみた。
得ることのできるギャラを比較すると、もしかすると専属化の契約のほうが低いかもしれない(いや、きっと低い)。ただし、安穏とした安心感を得ることはできる。ここに、笑い事にはできない「何か」があるように思える。
さて、自分の仕事はどうだろうか。不安がない、といえる人はなかなかいないだろう。そのとき、天使がやってきて「給料は低いかもしれないけれど、将来を約束してあげるよ」といってきたら、どれくらいの人が動いてしまうだろう。
そう考えると、日本的な長期雇用にはかなりの意味があったことになる。