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為替に翻弄される日本
先日、トヨタ自動車の記者会見があった。同社の副社長曰く、「1ドル=90円の為替レートでも利益をあげることのできる体制づくり」を目指しているのだという。その施策の目玉は海外への生産移転であり、国内の生産能力は70%ほどに減じる予定のようだ。
国民経済計算から、各産業の売上高と労働者数を把握することができる。そこから労働時間を求め(これは平均値を利用する)、そこから「100万円を生産するために必要な就業者数」を計算する。
それによると、輸送用機器は「0.073人」だ。この数字は、たとえば繊維業界の「0.305人」と比べると低いことがわかる。自動車産業は100万円の価値を創出するために0.073人しか必要がないということだ。もちろん、これは低価格車では実現できない。なので、日本の自動車産業企業は、高級車を中心としたラインナップを世界に発信してきた。
この等式は、「日本は高級車を生産し、それが世界で売れる」という前提で成り立っていた。その前提が崩れたとき、日本経済のひずみがはじまった。私は、自動車各社の戦略が間違っていたとは思わない。もとも日本人労働者のコストをペイするためには、高級車のような高付加価値商品をつくらざるを得なかった。ただ、今の時代は、よりコンパクトでスマート、安価なクルマが求められているということだ。
トヨタ自動車の記者会見では、高燃費車・安価というフレーズが繰り返された。新興国市場としてターゲットはインドと中国だという。そうだとすると、高級車中心のラインナップだったところから、現地生産・安価の戦略に切り替えざるを得ない。そして、内需が拡大しない以上、これまでより為替変動に敏感にならざるを得ないだろう。
「1ドル=90円の為替レート」であっても利益の出る仕組みづくり。それは、もしかすると、日本製造業にあらためて突きつけられた最後の試練なのかもしれない。