知らなきゃいけないこと。知らなくてもいいこと。(2)

知らなきゃいけないこと。知らなくてもいいこと。(2)

   この上司の教育方針、マネジメントスタイルについて、よしあしを訊かれれば、今の私はすぐに「最高だった」と答えるだろう。

これは強がりではない。

この上司と出会わなければ、設計者のところにあれほど頻繁に出かけることもなかっただろうし、サプライヤーの工場にあれほど行くこともなかっただろうからだ。

そして、「買う」という行為を超えて、自分の買った製品がいかに最終材の魅力に直結するかを考えることもなかっただろうからだ。

必死に自分の業務を考えることもなかったと思うからだ。

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かつて、購買業務は設計者が兼ねていることが多かったと歴史は語る。

設計者が自分でデザインした部材を自らが交渉したり、ときには納入も手伝い製品を創り上げていく。

そのときの「買い」はまさに、設計思想との連携があった。

「買い」は、最終製品の目的を前提に考えられ、実行されていた。

ソニーが設立してから、しばらくは設計者が部材を直接買い付けていたことは有名な話だ。

ソニー設計者は、以前ならば走って秋葉原にパーツを買いにいったこともあるという。

もちろん、私は設計者がバイヤー業を兼任せよ、という主張をしたいわけではない。

現在の分業体制を当然として、いや、当然だからこそ「自分の買っている製品の存在意義」というものを是非とも考えなければならないのだ。

その製品が一体どこの部分で、何という機能を果しているのか。

その製品がなくなったらどういう困りごとが発生するのか、しないのか。

お客にはどのような魅力を提供できるのか、できないのか。

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分業体制の徹底はよいことだ。

だから、各専門分野のプロフェッショナルが多量生産されることは歓迎すべきことであるかもしれない。

しかし。

それでもなお、「買う」ということが、その企業の全体の働きと完全に独立して存在することなどないはずだ。

それは、もちろん全ての部署に言えなければならない。

お客様の顔を忘れてしまう経理マンなどは消えてしまうべきだ。

自分の現在の業務は、常にその企業の最終目的にもフォーカスされねばならないことを、私たちは忘れてはいけない。

下らない毎年毎年のコストダウン要請の業務に忙殺されていたとしても。

「買うことしか考えていないバカ先輩を追い抜こう」

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