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自分ですべきことは?を追い求めるバイヤー
「こんな状態なんだよ、驚いた?」
あるエンジニアが、半ば諦めた口調で話をしてくれた。ある製品に関して、当初提示された見積を大幅に上回る差し替えの見積が提出された経緯を聞いたのだ。
その製品は、以下の内容で構成されている。
● 製缶加工(材料調達含む)
● シーケンサー(ソフト含む)
● 配線
● 部品組み込み(部品調達含む)
● 試験
要は、よく言えば一括発注、悪く言えば丸投げだ。本来だったら、購入したい製品の特性と、サプライヤーの得意・不得意や、生産能力等々を踏まえて決めるのだが、一括で投げる場合は大抵何か優位性があって、他は協力会社からの供給してもらって製品を纏める。その上で私が買うわけである。
今回の製品のようなリソースすべてに競争力を兼ね備えたメーカーがあるのか?少なくとも、今回大幅な価格見直しを要求してきたメーカーは、5つに分類したリソースの中で1つが比較的得意だ。競争力があるか?と聞かれれば、さぁ~どうでしょう?と言うレベルとしか思えない。このメーカーを選択した理由は、エンジニアへの対応が非常によかった、それだけである。
サプライヤーを選定するときに「餅は餅屋」的な選定を行うのは重要なことだ。板金メーカーに鋳造品を頼む(この例もどうかと思う)のは、QCD(品質、価格、納期)のいずれの面から考えても得策ではない。板金製品なら、板金メーカーに、欲しい製品に沿った生産能力を持つサプライヤーを選定するのがセオリーだろう。ところが、これを地道に一つ一つ行っていくことが、結構難しい。
「モジュール化」なんて言えば聞こえ良い。いろいろな、必要なリソースが異なる製品を組み立てて納入してもらう方法。システムで納入してもらうなんて言い方も耳にする。モジュールとか、システムとかいえば、何か最先端の購買手法に思えるのかもしれないが、その発言の裏に、
○ 一つ一つ図面化するのが面倒くさい
○ 細々した物を一点一点買っていられない
なんて思いがあれば、要注意である。組み合わせた後に一括で納入してもらおうが、個別に納入してもらおうが、事前検討のプロセスを簡略化しては、あえて自分からブラックボックスを作るようなものだからだ。私が直面している今回のケースでも、いろいろな製品の集合体であるにも関わらず、個々に踏み込もうとした瞬間、途方に暮れる。自社に資料が一切ないのだ。それはすべてサプライヤーからもらわなければならないのだ。
私は以前勤めていた会社に非常に苦い思い出がある。自分たちでやるにはちょっとサイズが合わない製品を最終製品化するプロセスを協力会社に発注した。ある時期から、その製品の受注が減りだし、最後にはゼロになった。その製品は、私が勤めていた会社は商流から外され、元々の顧客が、私が発注したメーカーと直接取引を始めていたのだ。ある程度の標準化も進み、市場にも受け入れられていた製品だったので、安定的な受注と損益が確実に期待できてたのが、無くなってしまったのである。そうなってしまったのは、本来ならば一歩一歩積み重ねて確実に行うべき仕事を、面倒くさいとかそんな理由でやらなかったことだ。身から出た錆とはこういうことを言うんだろうと思う。
でも良く考えると、私の元勤務先を外しても、市場では一切問題にならない。製品的にはまったく同じだからである。顧客からのアフターサービスの要請も、自社に詳細資料がないからとサプライヤーに直接対応させていた。こちらから「うちは何もやっていませんよ~」と宣伝するようなものだ。
モジュール化とか、システム化といって、一括発注するのは、その瞬間は「設計工数が減ります」「社内の工数が減ります」といったメリットが強調されるだろう。でも、一括でやらせるからこそ、自社で何をするのか?どういった付加価値をつけるのか?を明確にして、その内容を市場、顧客に理解してもらう努力をしないと、どんでもない将来的なリスクを抱えることになる。バイヤーとしても、大企業の内製から、中小企業への外注作業とするだけで、時間当たりのレート差で見た目安くなるかもしれない。でもそこに潜む危険をみることを忘れてはならないと思う。バイヤーとは本来、同じ条件でさらにどうやって安く買うか?を考え、実践する生き物と思うからである。