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訳有りサプライヤーを訪問するバイヤー
「お世話になりま~す、今日はよろしくお願いします」
定期的に取引を行っているサプライヤーを訪問。よい天気にも恵まれて、結構明るい気分で挨拶をした。しかし、応対してくれた担当者とその上司は、なんだか覇気がない。でも気のせいかな~と思って、早速打ち合わせを開始する。
今回の訪問は技術的な内容確認が目的。ところが、我々が確認したいことをよ~く解っているはずのエンジニアが登場しない。どうしたんだろ~と思っていると「ちょっと不幸がありまして・・・・・・」との返事。だったら事前に連絡をくれてもいいのに!と思ったけど、こうやって代理の人が一生懸命応対してくれているので、これはこれで有り難いお話と理解。でもそれでも何か、喉に刺さった骨は抜けない。
目的が無事達成されて、電車を待つまでの間、すこし世間話。最近の景気とか、他社からの受注状況とか・・・・・・すると、私も何度かお会いした先方の常務が登場。一通りの挨拶の後、カミングアウトが始まった。
そんな大きな規模の会社ではないけれど、何度か訪問する中で、社長に会ったことはなかった。昨年先代の社長が他界されてからは特に今回も時間を作ってくれた常務のみ。まぁそれならそれでいいや、と思える私は、然程気にしていなかったのだが、3ヶ月ほど前に、突如社長が経営を放り出してしまった事実が明らかになった。
放り出した原因は・・・・・・簡単に言えば、多角化経営の失敗。ある社長が肝いりで始めた事業が行き詰まり、会社への興味が失われてしまったということらしい。幸い、社長の個人資産で新規事業を行っていたために、財務的にはまったく影響はなかったらしいが、ともかく「や~めたっ!」ってことらしい。そして、残された幹部は、社長の説得やら、もろもろで忙殺されていたことがわかった。
いや、ちょっと笑うに笑えなかった。数十人の従業員を抱え、社是には「地域への貢献」を掲げている企業の社長が「や~めた」とは。興味を持って始めた多角化も、どう考えても関連性のない、「趣味」といわれても止むを得ない内容だ。好きだったんだろうけどね。
少し救われたのは、そんな状況で近隣のある企業が支援に名乗り出てくれたこと。なんでも原因は違うが、やはり存続の危機に陥ったときに、先代の社長には随分と助けてもらったことがあるらしい。その支援のお陰で、かえって今様々な改革が行われているという。ただそんなふざけた理由で「今後どうなる?」ってなった会社の雰囲気は、簡単には元に戻らない・・・・・・そんな常務の嘆きが印象的な出張だった。