調達・購買力が企業力を左右する

調達・購買力が企業力を左右する

私の例では、こちらの上司を含め、役員クラスまでが交渉にあたってくれたことで、最悪の状況は免れました。つまり、なんとか開発を行ってくれることになったのです。これは、私の大いなる失敗の一つとして、記憶に残っています。

調達・購買と聞いたとき、多くの人は「会社の金を使って、モノを買ってくるだけの仕事」と思ってしまうようです。サプライヤーに対して、常に偉そうにしているのだろう、と勘ぐる人までいます。

しかし、現場のバイヤーであれば分かってもらえるように、ときには頭を下げてまで「調達させてもらう」ことは珍しくありません。取引が対等な立場であるのは当然ですが、それにしてもだいぶイメージとは違うはずです。

営業部門ならば売ってくればマル、高く売れれば二重マル、という評価はありえます。安く売ってしまっても、たくさん売れればよしとするところだってたくさんあるでしょう。しかし、調達・購買は、買えて当たり前。納期は守らせることができて当たり前。価格に関しては、安いことしかよしとされません。高く買うことで取引先に配慮ができた、という高評価はありえないのです。

バイヤーはときに開発をお願いしようとしていたサプライヤーに断られ、製品自体を断念せざるをえなかったり、やむなく他のやや技術的に劣るサプライヤーにお願いして製品魅力を低下させてしまったり、という悔しい思いをした経験を持っているでしょう。

自分達の望むサプライヤーともっと強力に連携でき、コストも安くできれば、どんなに良いことでしょうか。どんなに自社に寄与できることでしょうか。現在、企業が社会や株主から求められていることは単なる売上増だけではありません。

・ 環境(エコロジー)に配慮した生産体制、またそれらに優れた部品の使用

・ 遵法やコーポレートガバナンスの強化

・ 毎期のコスト低減

・ グローバルな生産体制の確立、ボーダレスな価格競争

・ 開発スパンの短期化、先端技術の取り入れ

これらの項目のうち、調達・購買部門と無関係なことはありません。いや、むしろ調達・購買部門が積極的に関わり、主導していくべきものです。

多くの企業が未だに営業部門に注力している一方で、調達・購買部門に力を入れ始める企業も出てきました。調達・購買部門が一丸となって、戦略を練り、サプライヤーを選択し、自社内でのプレゼンスも上げていっています。

私の失敗例はどうだったのか。若いバイヤーに必要なのは、常に自分の実力以上の絶壁に挑み苦悩の中で成長のチャンスをつかむことだ、と思います。なので、あの熱意は評価してほしい。

しかし、正直に反省すれば、足りなかったところは部門全体でのコミットと、強い組織力を十分に活かした取り組みでした。私は未熟なまま、走りすぎてしまったのです。学習もまだまだなレベルでした。組織を動かそうという気も欠如していました。

部門全体で強い力を発揮しようと思えば、各人が調達・購買を学ぶ必要があります。調達・購買とは何ができるのか、あるいは何ができないために社内のどの部門と連携しなければいけないのか。

調達・購買力が企業力を左右されることとなった現在、調達・購買はこれからの必須科目なのです。

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