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購買と止め処ない哀しみ(1)
「このバカヤロー!どうするつもりだ!!」
そのバイヤーには忘れられない思い出がある。
正月仕事始めの一日目。
年明けの期待感と、これからまた仕事をせねばならないという重圧感が混ざったまま、そのバイヤーは机に座っていた。
すると、バイヤーの机に集団がやってくる。
生産管理の担当者、設計担当者、そして、見たことのない、おそらく管理者たち。
「オイ!すぐに会議だ」とその集団は言う。
そこには、「いや、年初めの賀詞交換会がありますので」という言葉を挟もうとする余裕さえ許さないかのごとくだった。
そして、会議が始まる---。
いくつかの部品の納期トラブルだ。しかも、そのバイヤーの担当のものが多い。
その中でも最悪なことは、そのバイヤーのアシスタント女史が年末にサプライヤーに発注を忘れていたものがあることだった。
もっと最悪なことは、それを使用する組立てが待ったなしの状況だったことだ。
「おい、お前なあ、どうするつもりなんだよ!」と生産管理の担当者は叫ぶ。
しかし、そのバイヤーは「急ぎます」という言葉くらいしか思いつかない。なぜ、こんなピンチにも欧米人は詩的で洒落たジョークを言えるのだろうか、と洋画を見てはバイヤーはいつも思っていた。
「このバカヤロー!どうするつもりだ!」と誰かが叫ぶ。
そのバイヤーは「とりあえずサプライヤーのところに行ってきます」と答えるだけだった。
・・・・
そのバイヤーは私だった。
最悪の年始を、昨日かのように思い出している。
膨大な発注量。いや、発注量はたいしたことがない。問題は注文の件数だ。
たくさんの仕事を抱えれば、それだけ発注する件数も増加してゆく。小さな部品から大型の機器まで。
トラブルが一定の割合で起きるとするのであれば、たくさんの仕事を抱えたバイヤーは当然トラブルにもたくさん出遭うことになる。
私は前述の例で、すぐさま発注手続きをし、出張申請をし、サプライヤーの工場に出向いていった。
注文書も処理されていない段階で(当時、夜間バッチ処理が行われていたので、実際の注文書が届くのは翌日だった)サプライヤーに行って、どうなるとも思わぬ。
しかし、そこには「とにかく動かねばならぬ」という脅迫感にも似た、衝動があった。
「動かねばならない」--。この言葉は、どこか行動することだけを賛美しているようではあるものの、実際「行動すること」でなんとか多くの問題をクリアしてきた。
そこで--、と思う。果たして、あの年始に持っていた感情を未だに持ち続けているだろうか、と。
走り続ける中で学ぶ。そして、走り続けることで成長する。そのことができているのだろうか、と。