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購買戦略がいるかいらないか(1)
「この会社を去ることができて嬉しいです」
歓送会のときのことだった。
直属の上司は、最後の挨拶でこう語った。
子会社に出向する1週間前。
普通ならば名残惜しいところを、この上司の最後のジョークだった。
「きみたちも分かっていたと思うが、うちの会社は上の上から命令が降りてくる。その命令は常に絶対性を持っている。それを常に遂行していくのが、私の役目だった」
自身の意思のカケラも無く、上の言うことをひたすら受け入れていくだけの日々。
これをきいたあなたは言うかもしれない。
「なんて自主性のない人だ」
しかし、弱者がいるとすれば、それは弱者を生む体制があるからだ。
もちろん個々人のモチベーションを語るのはよい。それを改善しようとするのはよい。
だが、この「上の命令は絶対」という身もふたも無いコトバは、ある意味、少なからぬ会社で見られる真実を物語っていないか。
・・・・
今まで話したことのあるバイヤーの何人かも同じことを言う。
「あのねぇ、こっちの会社には目的の意味もないの。目標数値の根拠もないの。だけれど、査定に関わるもんだから必死にやっていく。それで結果的には良いことが多いの。でもそれはそれでいいじゃない?」
そして最後に出てくるコトバはこうだ。
「だから、個々人に戦略を持つ必要なんて全く無いんじゃないの?」
私はこれを否定する気は無い。
戦略とは目的を達成するためのものだ。
ある目的を達成したとして、それが緻密な戦略に基づいていなくても何が悪いというのか。
むしろ、緻密な戦略よりも、時代の感性で考えた思いつきが功を奏すときだってあるのではないか。
そして、優れた戦略を持つ会社よりも、劣った戦略しか持たない会社が業績がいいなんてことも良くあることなのではないだろうか。
あるいは、戦略など持たなくてもサプライヤーの前で机を叩けば安くなるのではないか。
戦略など、コトバだけで、実務を放棄した人間の暇つぶしではないのか。
繰り返し、私はこれらのコトバを否定する気など無い。
たしかに、戦略の構築とはMBAや暇人の余興として消費されたきらいがあった。