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購買戦略の先にあるもの(1)
「『士農工商イヌ携帯』ですから」
私が以前勤めていた会社は携帯電話も作っていた。
毎年毎年下がりつづける販売単価。
自転車操業とはまさにこのことか、と思わせるくらい、作っては売って作っては売って。
終わりのないレースを続けるかと思うと、市場からのクレーム、そして飽きられ捨てられ、店頭販売は「0円」となっていた。
某キャリアの、携帯電話メーカー担当の購買マンはヤクザらしく、常に値引きしか要求してこない。
しかも、その態度に面と向かって啖呵を切るだけの上位関係にもない携帯電話メーカーたち。
いや、むしろ携帯電話メーカーの営業マンはまだ前線に立っているだけマシだったかもしれない。
その営業マンの取ってきた単価でやりとりさせられる工場の立場を考えればもっとむなしい。
さらに、その工場の目標に向かって努力させられる末端のバイヤーはもっともっとむなしい。
そこには理論などなく、自社の利益確保だけのためにひたすら目標コストをサプライヤーに押し付けざるを得ない構造がある。
そして、いつしかバイヤーの立場を劣化し、あるいは自虐的に、こう言ってしまうのだ。
「士農工商、でいくと、それ以下。イヌ以下ですね。士農工商、イヌ、携帯みたいなもんですよ」
同じ会社内で聞こえてくるこのブラックジョークがどれだけ哀しく響いてきたかを忘れることはない。