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購買部の品格(1)
「お前って何も分かっていないんだな!!」
ある飲み会でのこと。
新人バイヤーは職場の同僚と半期の慰労会をやっていた。
その新人バイヤーは入社半年、つまり購買歴半年だった。
「半年経ってみてどうだ?この仕事は?」とそのバイヤーの上司である課長が尋ねた。
そのバイヤーは答えた。「ええ、色々分かってきた気がします。でも、まだ仕事を完全に任せられていない気がしてます」
この一言がそのバイヤーのグループリーダーをイラつかせた。
「なんで、そう思う?」。グループリーダーは即座に訊いてきた。
「いや、ぼくの仕事なのにやってもらっていることがあるし」
「じゃ、やれよ」
「いや、やりたいんですけど」
その会話は負のループに入っていった。単なる質問のようにみせかけて、実は若手を詰問しているのであった。
「じゃぁ、あの製品についてどれだけ知ってる?」
「どれだけ学んだ?」
「お前から提案したいことってあるか?」
「OC-3って何メガだ?」
「ATM(Asynchronous Transfer Mode)のこと理解しているか?」
単なるイジメであった。
その後、そのバイヤーの無知を理解して、こう言った。
「全く分かってなお前!そんなんじゃ、仕事なんてできるはずないだろ!!」
・・・・
そのバイヤーは私だった。
よく思えば、最初に良き指導者にめぐり合ったものである。
これは皮肉ではない。
当時を思い返せば、担当は私の製品であっても、よく他部署からはそのグループリーダーに問い合わせがきていた。
その方は、「私に訊かないでくれ」とは言わず、高速でアドバイスを返答していた。
しかも、そのアドバイスは的を射ていた。こうなれば、他部門の誰も私になど訊いてくるはずがない。
そのグループリーダーは日々勉強もしていたし、「言うときは言う」「守るべきものは守る」主義の人だったので、周りから頼られていた。
第三者から見て、客観的にそういう評価だった。
よく、新人バイヤーが購買・調達に配属になって、しばらく経ったら会社の同期などに「俺は何億円も動かしているんだ」と自慢(これが自慢?)していることがある。
私の場合は、「自分で何かを動かしている」という感覚を持つことがなく、そのグループリーダーのおかげで「ちっぽけな自分」という感覚しか持つことができなかった。
これは今思えばバイヤーとして幸運だった。
繰り返すが、皮肉ではなくそう思う。