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金儲けとバイヤー(2)
IT企業のライブドア。
こう呼ぶことを、なぜ皆拒否しないのだろうか。決算報告を見れば、IT事業よりも金融ビジネスから大部分の利益を得ていることは明確であり、それも見識のある人であれば昔から言っていたことだ。
しかし、私はあの堀江社長逮捕に象徴されたもの、皆が「IT企業の没落」と捉えざるを得なかった時代背景というもの、それら自体が脱製造業への高らかな夜明けのようにしか思えないのである。
あの逮捕劇に描かれたのは、逆説的にITとソフト産業の巨大さを見せつけた事件ではなかったか。
日本でも、ITという産業が世の中の最大の注目を集めることができる、ということを示した事件ではなかったか。
そして、あえてこの事件を世界規模に結びつける。
ほぼ同時期にジェネラルモーターズとフォードの不振のニュースが報道された。中国では異常な経済成長率が続いていると報道された。
日本ではIT寵児が時代の話題をかっさらい、アメリカでは伝統的な製造業者が憂き目を見、中国では経済が続伸している。
この三つはどうつながるのだろうか。
それはアジア勢の躍進では決してない。
単純にこれは「アメリカから、いよいよ脱製造業化が進んでいる」ということにほかならないのではないか。
このことと同時に、バイヤーの進んでいく道も決まってくる。
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アメリカの自動車産業の没落は、もちろんその企業の製品の魅力がなくなったことも大きいだろうが、マクロ的に見れば単にアメリカという国自体が「モノづくり」から脱皮していると見れなくもない。
実際、アメリカの企業の時価総額を見てみれば、どれだけ「非製造業」企業がランクインしているかを知ることになるだろう。
あえて抽象的に言えば「ソフト産業」への移行が劇的な速度で進んでいるのだ。
モノからソフトへの流れが進んでいるにも関わらず、そのことを分からない日本企業が米国で「モノづくり」文化を注入しているかのようにも見える。
誰もがわかっている通り、製造業がかつて、アメリカから日本へ、日本から中国へ移ってきているように、現在は本当ならば日本が率先してアメリカからソフト産業を引き受けねばならないときにきている。
「鮮やかに製造業から脱皮しようとしているアメリカ企業に対して、日本企業はほとんど変われない時代であった」。もしかすると、現在の米国自動車市場における日本勢の優越は、このように振り返られる時代が来るのかもしれない。
製造業としての時代が変わるとすれば、バイヤーも変わらざるを得ない。
そして、その先の時代でも活躍できるバイヤーは何か?と自答せざるを得ない。
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ここで、二つの軸を考えてみる。
(1).業務スタイルとして、人力に頼るのか、システム系を使用するのか
(2).産業構造として、IT・ハイテクか、モノづくり主体か
A領域:人力/モノづくり主体 B領域:システム系/モノづくり主体
C領域:人力/IT・ハイテク D領域:システム系/IT・ハイテク
それぞれの領域に当てはまる国を考えてみてほしい。
D領域はアメリカであり、中国はA領域であり、日本はDに近いA領域にいるといっていい(ちなみに日本が業務でITを活用していると思ったら大間違いである。あれほど無駄な会議で顔をつき合わせている時間を浪費している日本は旧近代にいる。あえて予言するが、会議を週に3回以上やっている会社は潰れる)。
もし、日本が将来アメリカの道を追って、A領域に行くのであれば、「製造業企業」に属するバイヤーがしなければいけないことは自明だろう。
まず一つ目は、日本より西の国、つまり中国や東南アジアの国々対して、「購買業務という ものの本質を教える役割」になる。
あるいは、中国や東南アジアのサプライヤーを勉強し、そこで実際に活躍する立場となる。
二つ目。日本自体は、研究開発や先端技術開発に取り組まざるを得ない。したがって、今までのような汎用品を買ってくるというスキルは必要とならない。最先端の情報を常に貪欲に吸収し、新製品をいかに探し、量産につなげていくかというスキルを磨く必要がある。「目利き」として、攻める購買になる必要がある。
あるいは無形材のコンサルティング領域で活躍するしかない。
私はそこまで温かい人間ではないので、そういう時代が来てから、その時代に適応できない事務系バイヤーが増えてしまったとしたら「こういうことが起きるのが確実なのに、何の準備もしていないのは愚かだ」と言うしかない。
その対応を今こそ必死に考えるべきときである。
「バイヤーは、将来の絶望からはじめよう!!」