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2日目④
バイヤーの能力というと、交渉力とか何だかんだ言われているが、本当は交渉な
んてしたくない。個人経営の店で何でもかんでもやっている人なら別だろうが、大
中企業に勤めているバイヤーならば、そのものが本当に安いかどうかよりも、その
ものが安いかのように社内の人に見せることが大事なのだ。「私というバイヤーがゆ
えにこの金額を提示させることができた」という虚像を社内に作り上げることが大
事なのだ。ここまで話すとさらに多くの人はうなずいた。だからバイヤーは、「今ま
でこの金額だったけど(=つまり、私以外のバイヤーは高い金額しか提示させるこ
とができなかったけど)、私がこの見積りをとることによってさらに安くすることが
できました」、なんてどうしょうもないことを日々言いまわっている。
でも、もしやりたくないだったらなぜ「やりたくない」と言わないんだろう。お
そらく、それは今までのイメージがあまりにも強固だからだ。バイヤーは目利きで
あって、市場のことをよく知っていて、安い金額にするように交渉して製品を持っ
てくることができる、というイメージがあるからだ。またそのイメージを踏襲する
ことは素晴らしいことだと信じこまされているから、なかなかそれに反することは
言うことはできないでいるのだ。でも本当はこういうことではないだろうか。交渉
もしたくないし、面倒くさい調査もしたくない。できれば、相手から「どんどん価
格を下げます。下げさせてください」と頼まれて、取引先が集まってきて、楽に仕
事をしたいのではないだろうか。
さっき私は大手自動車メーカーの話をした。もちろんあれは倫理的に問題がある
行為だけれど、多くの人が「うらやましいな」と思ったに違いない。だって、面倒
くさい交渉や業務も何もせずに10%を自動的に下げることができるならばそれに
越したことはないからだ。私はこの大手自動車メーカーのような手段を薦めるわけ
ではない。当然、違う。私が言いたい事はこういうことだ。やりたくない事がまず
やりたくないといえよう。そして、相手から自動的に、値下げさせるようなインセ
ンティブを作り出すような仕組みをやってみよう。まさにそれが最初に行った馬鹿
でもできる仕組みづくりと思うのだ。