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6日目②
スーパーで無償のサンプルを試食させることも同様である。あれは、食品の良さ
を確認させたいわけではない。お客がその試食品を「食した」という事実のみが大
事なのである。そして、食すことによって売り手側と買い手側の心理的障壁を取り
除くことに大きな意味があるのである。だから、食した後に「ひとつどうですか?」
と声をかけられれば、断ることに(たいていの人は)申し訳なさを感じてしまう。
あるいは、その食品に対してバリヤーが取り外されているから、高くても喜んで買
おうとしてしまうだろう。そこには、「もっと美味しい食品があるはず」という疑問
すら抱かせないものだ。
かつて、音楽業界で MTVが無償のプロモーションビデオを流したときに、「これ
では CDを買う人はいなくなるのではないか」と危惧する声が上がったが、杞憂に
終わった。むしろ、無料でビデオを提供された視聴者たちは、気に入った曲の CD
を買いに走ったのである。無料で提供することによって、視聴者とアーティストの
距離が縮まった。買うまでどんな曲なのかも分からないよりは、映像つきで提供さ
れた曲を知ることによって、より購買欲が高まったのである。今では、 CDショッ
プでも希望者に、新人アーティストたちのオムニバス CDを配布していることがあ
る。各アーティスト一曲が丸々入っていて、合計で 20曲ほど収録されているものも
ある。「ここまで無料にしちゃって大丈夫なのか」と心配する人もいるだろうが、結
局は気に入ったアーティストの曲を買い求める人が多いため、全く無償配布自体に
問題はない。むしろ、プラスに絶大なる効果を発揮しているのである。