1-(4) 調達・購買の「あるべき姿」とは何か「調達・購買部門のPDCAの回し方」

1-(4) 調達・購買の「あるべき姿」とは何か「調達・購買部門のPDCAの回し方」

調達・購買部門におけるPDCAとは、次の内容を指します。なお、ここでは通常の並び方を若干替えて実務上分かりやすく説明しています。

(1) Do(調達の実行)・・・まずは日々の競合やコスト交渉、毎期のコストダウン要求、発注・納入フォローなどを行います。

(2) Check(サプライヤーの評価)・・・(1)に基づき、サプライヤーの実績を評価してゆきます。競合の勝敗、コスト低減率はどうか、毎期価格協力はしてくれているか、納期は守っているか、不良品発生はさせていないか、新技術に対応できているか、を確認します。

(3) Action(新規サプライヤーの追加、改善支援)・・・(2)の確認を受けて、それではどうしたらよいかを立案します。このままのサプライヤー構成でいくのであれば、関係強化に力を入れます。また、サプライヤーに足らないところがあれば、こちらから改善を要求したり、人員を送り込み合同で向上活動を行ったりします。あるいは、新規のサプライヤーを探します。

(4) Plan(調達戦略の構築、コスト低減目標の立案、調達要件の追加・削除)・・・(3)を受け、次回以降の調達にいかに生かしてゆくかを練ります。新規サプライヤーを参入させるのであれば、どのタイミングでどの製品からか、目標コストはどこに設定するか。そして、環境変化に伴って要件の追加は必要ないか、安定した調達を阻害しているバイヤー企業の要件があれば、それを変更・削除できないか考慮します。

これらは多くの場合、調達・購買部門だけで実施できるものではなく、設計・生産・営業部門も巻き込んだサイクルとなります。

よりよい調達活動を実現するために、また日々変化し続ける企業環境に対応するために、このような地道な改善活動が必要となってきます。

日々の苦労を愚直に繰り返してもよいでしょうが、それだけでは進展することはありません。納期で困っているのであれば、サプライヤーの問題か、あるいは自社の体質の問題か、を見極める必要があります。そして、その問題を解決するための施策を立案してはトライし、最善案を模索せねばなりません。

特に、Checkのところは数値で表現されるため非常に定量的に語ることができます。しかし、最もバイヤーが正しく実施できていないところも、このCheckのところです。自分の印象にのみ基づいて戦略を構築したりする例を見かけます。あるいは、日々の業務に忙しいからか、サプライヤー企業全体を正しく把握していないこともあります。

このようなPDCAサイクルを確実に定着させ回すことができる企業は多くありません。その一方で、実行している企業は着実に成果をあげて行っています。いわば、調達・購買部門の改善にもつながっており、企業の生産活動は向上します。

考えてみれば、日々の調達活動の結果を社内にフィードバックし、次の調達活動につなげてゆく、ということは当然です。しかし、多くの企業のバイヤーと話していると、「最悪なサプライヤーがいる」というので、「なぜそこを改善させたり、発注先を変更したりすることができないのか」と訊いてみてもはっきりしないことが非常に多いのです。ときには悪い、という印象だけで、問題点を具体的に挙げることすらできないときもあります。

少しでも自分の日々の業務が自社の企業価値最大化につながるように、このPDCAサイクルを実施せねばなりません。

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