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200X年、設計者は全てソフト屋になる(1)
「そんなこと分かりません。パソコンでやってみないと」
ある不具合品解決のための会議が行われていた。
不具合の原因は、ある機器の中に入っている、香港製のデバイスであることは明らかだった。
それを販売したのは、日本の商社。商社マンも製品の知識はあるとはいえ、中の構造やメカニズムまではわからない。
そこで、香港からそのメーカーの設計者を急遽召集することになった。
ただでさえ、こちらは小口の買い手。しかも、不具合の会議だとすれば、誰も出たがらない会議だった。
次々に飛び込む質問。
材料の保管条件から、製品内部のパターン、ハンダ付け条件、アッセンブリー治具のメンテ条件から、接着材料の使用期限、何から何まで。
そして、ある箇所の発熱がフォーカスしてきた。
おそらくこの箇所の発熱が他への障害になっていることが明らかになってきた。
そして、皆はその香港からの設計者に問うたのだった。
この箇所をワンランク上の耐熱品に交換してはどうか、と。
するとその薄髪で色黒の設計者は答えるのだった。
「いや、そんなこと分かるはずもない。パソコンの設計ソフトもないのだから」
・・・・
「いや、ちょっとシミュレーションを」
「パソコンでシミュレーションをした結果」
「ソフトの条件では」
現在、多くのハード設計者が業界を問わず、アナログ感覚を忘却し始めている。
その流れは急加速で進み、衰えを知らない。
例えば、あなたが電機業界のバイヤーであれば、設計者の多くがナショナルセミコンダクターの設計ソフトを使っていることを知っているだろう。あるいはXILINXでもいい。何でもいい。
欲しい機能を入力する。そして各種の設定。
そしてエンターを押すと、回路設計から、その周りの抵抗、コンデンサまで自動的に選択してくれる。
設計者はそれを写し取り、パーツリストに記入していくだけだ。
ここには、アナログ感覚の必要性はなく、さらに、ソフトが自動的に何もかもを選択していくので、そこには部品の統合の感覚すらない。
もちろん、そこには、購買部門のマスターベーション的な「購買戦略」など入り込む隙間もない。
これは、一見アナログに思われている成型品設計でも一緒だ。CATIAをいじくり、強度と発熱のシミュレーションをパソコン上でやって、はい終わり。
自動的に部品も何もかもが決定していく。
ここに果たしてバイヤーの知識など必要あるだろうか?