4-(6) 品質の管理「私の経験」

4-(6) 品質の管理「私の経験」

「また、同じところから不良品が出たぞ!」

ある時期、受入れ担当者から立て続けに電話がかかってきたことがあります。「同じところ」とはあるサプライヤーのことでした。あるサプライヤーから納入される製品に不良品が多いというのです。基本的には、不良品は一度でも発生させてはいけないものです。

消費者を相手にしている企業であれば、一度不良品を消費者の手に渡すともう購入してくれることはないでしょう。それだけ不良品を出さないことは大切です。それなのに、立て続けに。

すぐにこのサプライヤーに品質監査を実施することにしました。そこで分かったのは、作業者の退職率がとんでもなく高いことでした。基板に電子部品を半田付けし納入する外注工場で女性中心でしたが、1年間勤続している人はほとんどいません。この定着率では、現場の品質が安定するはずがありません。

品質管理を難しく感じているバイヤーもいます。また、多くの企業ではバイヤーが品質を管理せずに他部門に任せているところもありますので無関心である場合が多いようです。しかし、品質管理は特別なことではありません。

簡単に言えば、「不良品は出ていないか。出ていたとしたその問題は何かはっきりさせているか。その問題を解消し、再発を防止する仕組みを構築しているか」ということだけです。

① 品質基準を持ち、その作業・検査方法が決められているか

② 作業者に①が教育され、浸透し、規準通り実施されているか

③ 結果としてターゲット通りの製品ができているか

④ ③が芳しくない場合は対策が練られているか

こういうことを書類や体制だけではなく実践されているかどうかを確認してゆきます。不良品を出す工場はこのどこかのプロセスに問題があるはずです。

私の例では、まさに②が問題でした。人員の定着しない工場で、社内全体の技能が浸透するはずはありません。半田付けとは、ご存知の方が多いように、非常に高いレベルを必要とします。半田ごての温度や半田量や盛り方によって、将来の持続性が決まります。失敗すればクラックが生じ、故障の原因ともなります。

実は、この工場、半田付け作業の場所に吸引機を設置していませんでした。半田付け作業には必ず換気が必要で、吸引機は必須です。そうでなければ作業者は鼻や口から半田を吸い込むことになり、体調不良になります。

これが体調不良による女性作業員の退職につながっていたのです。考えてみれば、最悪の場合不妊症になりますから辞めてゆくのは正解だったかもしれません。このサプライヤーは吸引機をすぐさま設置し、作業員の衛生安全をまず確保することで徐々に品質を安定させてゆきました。

①~④に問題があるか、そしてすぐに解決できないようなことであれば、真の要因を見つけるまでしつこく調査する必要があります。これはバイヤーが現場に行き確認する必要があります。

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