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7-(2) Win-Winの結果を意識する「私の経験」
「一年や二年で深い関係になれるとは思っていませんから」
私は営業マンの一言に救われたことがあります。新規サプライヤーとのやり取りの中のことでした。
その当時私が担当していたのはネットワーク機器でした。その当時主力製品をとあるサプライヤー(A社とします)から購入していたのですが、そこが全くダメ。価格は高いし、対応も良いとは決して言えませんでした。そこで私は各部門と組んで、新規のサプライヤーを探すことにしました。
そこで出会ったサプライヤー(B社とします)がいました。対応も素晴らしく、品質・価格とも問題はありません。早速、そのB社と新規製品の仕様打ち合わせを開始しました。技術力も問題がなかったことから設計者の評判も好評でした。
もちろん、何の問題もなかったとは言いません。それに、こちら側の不手際もありました。しかし、大問題と呼べるものは何もなく、通常であれば5百万円ほどかかる試作品も「無償で作成します」とまで言っていただきました。
問題になったのはそのあとです。実は、当時調達していたA社が危機感を持ったのか、突如として営業攻勢に出てきました。後出しじゃんけんだったので、B社がいくらくらいの価格を提示しているか、どこかの部署から漏れたのでしょう。B社よりも20%ほど安価な見積りを突如提示してきました。「ここまで下げますから、継続した発注をお願いします」というわけです。
しかしこちらは試作品までもらっています。何回も断り続けました。しかし、A社は私の上司と設計部門の上司へ直談判をしてしまいました。これは私のミスです。まだ付き合いのないB社よりも顔見知りのA社の方が、上司には評判が良いことは明らかでした。
かなり私は抵抗したものの、結果、今回はこれまでの付き合いもあることから、A社に継続発注することになりました。
私はB社の担当者に合わせる顔がありませんでした。5百万ほどかかった試作品を無償提供までしてくれていたのです。
私と設計担当者はひたすら謝ることを決めました。B社の営業マンと打ち合わせ時、私はできるだけ誠心誠意説明しました。そしてお詫びを繰り返しました。
すると、営業マンは「そんなに謝らないで下さい。理解しました。また、次回ですね。あきらめませんから」と言ってくれました。
「一年や二年で深い関係になれると思うほど図々しくありませんから。それに、深く考えていただいた結果でしょうから」とも。
その後、ネットワーク機器ではB社が大きくシェアを伸ばすことになります。B社の営業マンは計算していたとは思いませんが、あのときの言葉がその後の両社の関係を形作ったのです。