7-(6) サプライヤーに適切な利益を確保させる「適切な利益供与」

7-(6) サプライヤーに適切な利益を確保させる「適切な利益供与」

ただし、教科書的に言えば、サプライヤーに対しては理屈の無いコスト低減要求ばかりを繰り返してしまうと品質に影響が出てしまう。だから、適切な利益はサプライヤーの管理費として認める必要がある。ということになります。

もちろん、数度限りの取引で終わってしまうサプライヤーの利益を考慮しても時間の無駄ですし、あるいは逆に一定の利益を必ず加算してくるサプライヤー(市場を寡占しているCPUメーカーなど)に利益を一定以下にするように交渉しても無駄なだけです。そういう場合は、そのサプライヤーを使用すると決定した時点で、相手主導になってしまうことは覚悟せねばなりません。

利益を一定額確保させるサプライヤーは、依存度が高く長期的な戦略パートナーとお互いが認識するところです。あるいは系列・関連会社です。戦略的パートナーであれば獲得した利益を次世代の製品の基礎開発に役立ててもらわねばなりません。また、資本関係のある系列・関連会社に対しては運用を把握することが必要になります。それには、その利益を将来的にいかに使用してゆくのかを毎期レビューしてゆくことです。

繰り返しになりますが、管理費とは三つの構成から成ります。一般管理費、製品開発費、利益です。最適な方法は、実際に発生する一般管理費と製品開発費を実額計算し、利益率を取り決めることです。しかし、一般管理費のところは製品毎の計算が困難であるため、管理費全体を①同業他社比 ②バイヤー企業比 ③優良他社比 により率(%)として取り決めます。

その率に従って日々の調達を実施してゆきます。そして、その過程で獲得した利益を毎期使用使途予定と実績などを管理してゆきます。これは通常のPDCAのサイクルと変わるところはありません。

重要なのはその獲得した利益をいかに使用していくかを両社で協議することです。将来両社がより高いQCDによる魅力の高い製品作りを可能とするように、お互いの意思を疎通させるわけです。

ただし、ここで問題となるのは、「利益を確保させることの大切さは理解できたが、むやみに利益を与えるとコスト高になるのではないか」ということです。系列・関連会社であればまだしも、戦略パートナーであれば相手の利益率を向上させるだけの結果になるのではないか、と。

確かに、これまで5%程度の管理費率のところに、10%の管理費率を認めようとすれば5%分の価格が上昇せざるをえません。そこで重要になるのが、適切な利益を確保させつつ、トータルのコストを抑えようとする仕組みです。

例えば、現行価格が1,000円だったとします。そこに、100円下がるアイディア(VAやVEアイテム)があったとします。通常であれば、1,000円-100円=900円となるため、当然ですが100円そのまま減額されてしまえばサプライヤーの利益改善にはなりません。これを、そのアイディアの発意元によって、①~③に分類しようというやり方です。

これまでサプライヤーからアイディア(VAやVEアイテム)がなかなか出てこないのは、コスト低減しようとするインセンティブがないためでした。100円下がるアイディアを出して100円下げられてしまってはサプライヤーにどんな得もない、というわけです。

よって、②③を導入し、①~③それぞれの定義づけを実施します。自社(バイヤー企業)が出したアイディアであれば①、サプライヤーが出したものであれば③、協同であれば②というように現行価格に影響させる段階を区切ります。

そのことによって、サプライヤーもコスト低減アイディアを出しやすくなり、結果として原価改善により利益も確保することができるようになります。もちろんこのような単純な分類ができない場合は多いでしょうが、トータルのコストを上げない前提でサプライヤーに利益確保の仕組みを協議し構築することが大切です。これは戦略パートナーだけではなく、系列・関連会社も同様です。

調達・購買部門の強い企業は、サプライヤーの利益にも目を配り、成長戦略にも介入しているところが目立ちます。ただモノを調達するだけではなく、サプライヤーの新技術への対応、グローバル展開までのサポートを要求されている調達・購買部門としては、サプライヤーの利益確保まで管理する必要性が高まっています。

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