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7-(7) 改善指導のやり方「サプライヤーを改善指導する」
改善指導が必要であるサプライヤーは多くの場合業績が悪化しており、仕事を求めてやってきます。仕事を確保させてくれ、そして(言いにくいが)通常以上に利益を確保させてくれ、と。もちろん利益を確保させるのはよいのですが、基本の考えは単純に利益を供与はせず、体質の抜本的な改善が前提となります。注射を打って利益を確保させるのではなく、利益が出せる体質にさせることが必要です。誰も注射を打ち続けることはできませんから。
それぞれの軸で何が悪くて、どう改善しようとしていて、その予想効果はどれくらいか、そして外れたときは何が予定を狂わせたのか、ということをチェックしてゆきます。問題解決型のアプローチではなく、原因解決型のサプローチをとる必要があります。したがって、起きている事象に対するリカバリーは当然として、それに留まらずなぜその事象が起きてしまったのかを深く掘り下げます。
出来高予定と実績に乖離があれば、①生産や出荷フロー上にボトルネック工程が存在しないか ②流動在庫の見直しができないか ③そもそもの生産計画の精度は良いか、見直しは可能か などということを確認・検証してゆくことになるでしょう。
人的資源に問題があるということになれば、①スキルの高い従業員を採用できないか(仕組みを構築できないか) ②給与・福利厚生の改善ができないか ③雇用の定着化のために様々なイベントや連帯感を醸成できないか ④残業を抑制させることができないか ⑤管理職のマネジメントスキルの向上が図れないか などなどが考慮のまな板に上がってきます。
まさにこうやっているとバイヤーの仕事ではなく、コンサルタントの仕事のようですね。でも、その通りなのです。単にモノを調達するという枠では収まりきれない深さがそこにはあります。
なお、改善指導は行うだけで結果が出る、という側面も少なからずあるはずです。毎月、必ず報告せねばならないのであれば、必死でサプライヤーが頑張る場合が多ですし、それに伴ってバイヤー企業からの訪問者も増えれば現場の意識も引き締まっていきます。私が訪問したサプライヤーの工場長からは「あなた利用するようで申し訳ないが、こうやって何回も来ていただくことで気迫や熱意が現場に伝わっていっています」と言われたことがあります。
相手も必死であることが相乗効果を生んでくるのでしょう。特に若いうちにこういう仕事に関わることは確実に通常のバイヤーの範囲を逸することになり、大変勉強になります。カバーすべき領域が人事・総務からファイナンスまで、やろうと思えばどこまでも広がるはずです。また、不謹慎ながら勉強としても面白いことは間違いありません。
素人だからできない、とは言わないで下さい。誰でも最初はできませんし、サプライヤーもよく分かっていないこともあります。経営とは、すなわち収支のつじつまを合わせることで、それ以上でもそれ以下でもありません。改善指導とは、簡単に言えば次を達成することです。「サプライヤーが、計画したことをやり、失敗した場合も成果があがった場合もその原因をしっかりと把握した上で、次に確実に活かすこと」。
言葉は悪いですが、経営の悪化したサプライヤーの担当になったときは「しめた」と思うくらいでいましょう。以前、倒産間近とも思えたサプライヤーの経営が好転し、利益を出せる体質になった姿を見ることは、どこか感動的でもあります。